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【復興祈念公園】開所の前倒し検討を(12月12日)

2023.12.12 08:50

 国と県が双葉、浪江両町に整備する復興祈念公園の本格的な建設工事が始まった。2025(令和7)年度の完了を目指しているが、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故発生から12年余りが経過し、風化の進行も懸念されている。近隣の伝承施設や震災遺構と連携してホープツーリズムの需要を掘り起こすため、完成エリアから順次開放することや、全面開所の前倒しに向けた財源確保策も検討してほしい。

 公園は沿岸部の約50ヘクタールで、震災・原子力災害伝承館の東側、浪江町の震災遺構請戸小の南側に近接する。国が中心部に追悼・祈念施設を整備し、県は周辺に広場や散策路を設ける。集落跡の保全や農村風景の復元を通して震災の記憶と教訓を伝えていく。

 近隣の伝承施設で津波の猛威や、原発事故による避難住民の苦悩を学んだ人が、震災前の情景を思い浮かべながら公園を散策するのは意義深い。追悼施設に掲示される県民の言葉から震災と原発事故を身近に思い、追悼と鎮魂の思いを新たにすることができる。復興の息吹も感じ取ってもらえるはずだ。

 国と県が2020年7月に施設配置計画を示してから本格的な着工まで3年もの歳月を要した。学識経験者の意見を聞きながらエリアごとの実施設計を進めたためという。これまでに多目的広場の一部の供用を開始したり、見晴台を設置したりしたものの、地元からは「進捗[しんちょく]状況が見えない」との声が上がっていた。

 完成は震災から15年の節目に当たるとはいえ、被災地に理解を深めるための施設は可能な限り早期に整備するのが望ましい。岩手、宮城両県には既に同様の施設が開設されているのに対し、本県が原発事故の影響で遅れている事情は理解できる。ただ、早期開所を願う住民は少なくない。県は弾力的に開放時期を検討するとともに、国に集中的な予算措置を働きかけるべきだ。

 県は、公園整備の進捗状況を示すパネルを建設予定地や伝承館など5カ所に配し、毎月更新している。多くの人が公園の計画を知り、完成後に再び被災地に足を運んでもらう動きにつなげる必要がある。伝承館に模型を設置するなど、基本理念や概要を周知するための発信力の強化も求められる。(円谷真路)