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【自動運転バス】地方こそ本格導入図れ(12月29日)

2023.12.29 08:53

 県内の公道で初となる自動運転バスの実証運行が田村市で行われた。乗り心地はよく、登下校の高校生、幼い子を連れた母親、高齢者ら幅広い世代・階層が利用した。自動運転バスは人口減少と過疎が深刻な地方にこそ有効な公共交通だ。課題を乗り越え、本格導入を果たしてほしい。

 JR船引駅北口発着で、今月9日から22日までの2週間、船引高、医療機関、商業施設などを巡る2ルートで無料運行した。定員10人の電気自動車を使用、利用者は計629人で、全101便、1日平均約45人が乗車した。

 田村市は船引地域を核にした都市機能集約と他地域と結ぶ交通網整備を構想している。高齢者の運転免許証返納や運転手の不足・高齢化が進む中、「自家用車がなくとも住み暮らし続けることができるまち」を掲げ、自動運転バス導入を目指す。全国に先行自治体はあるものの本県は前例がなく、田村市が先頭を走る。国土交通省の全額補助事業を活用した。

 期待する声が多い一方で、停留所までの移動の困難、ルート設定などへの要望が寄せられた。今年本格導入した予約制のデマンド交通「田村らくらくタクシー」、JR磐越東線、路線バス、タクシーなどを組み合わせ、生活環境や利用目的に応じたきめ細かな交通網が求められよう。

 自動運転はレベル1~5の5段階に分けられる。田村市の実証運行は発車などに人の介入を要するレベル2で、要件を満たしたオペレーター乗車が条件となっている。専用道や特定の送迎ルートで完全自動運転するレベル4を目標とするものの、当面の間、オペレーター育成が不可欠だ。

 人の移動を促し、市街地ににぎわいを生む狙いもあり、医療機関や商業施設など事業者との連携は欠かせない。

 田村市は2025(令和7)年度に本格導入させたい考えだが、補助事業終了後の継続が課題だ。車両の購入・維持、システム構築などに費用が発生する。利用者負担を含め、採算性を確保するモデルを構築する必要がある。

 県内の市町村から視察や問い合わせが相次いでいる。住民の移動手段確保に危機感が高まっている証左だ。公共交通は地域社会維持に不可欠であり、国を挙げた取り組みを望みたい。(鞍田炎)