第103回全国高校ラグビー大会第2日は28日、大阪府東大阪市の花園ラグビー場で1回戦10試合を行った。3年ぶり3度目の出場の福島県代表の学法福島は名護(沖縄)に14―46で敗れ、花園初勝利はならなかった。
学法福島は名護の走力に立ち上がりから手を焼き、4トライを許した。前半30分過ぎに相手ゴール前で得意のドライビングモールを形成。ウイング渡辺大がボールを持ち出してトライを決めた。後半9分には渡辺大が再びトライし一時、13点差まで追い上げたが、以降は得点できなかった。
▽1回戦
名護(沖縄) 46(27―7、19―7)14 学法福島
【評】学法福島は前半の大量失点が響き、名護に敗れた。4連続トライなどで前半26分までに27点差とされた。同32分にモールから渡辺大がトライして7―27で折り返した。後半は渡辺大の2本目のトライなどで追い上げたが、及ばなかった。
■伝統の「塊」トライ生む 渡辺大「来年こそ勝つ姿を」
学法福島は花園初勝利を逃したが、伝統のドライビングモールからトライを奪うなど積み重ねてきた成果は発揮した。前後半に1トライずつ挙げたウイング渡辺大和(3年)は「来年は勝つ姿を見たい」と後輩に後を託した。
ドライビングモールを仕掛けたのは前半30分過ぎ。敵陣の左中間ゴール前10メートルから「一つの塊」となりゴールラインを目指した。最後尾で仲間を押しながらも渡辺大の頭は冷静だった。「右に隙間がある」。密集からボールを持ち出すと、相手守備をかいくぐりインゴールに飛び込んだ。
立ち上がりから名護の走力に翻弄された。モールに持ち込む前にパスを散らされ、持ち味を出せないまま連続4トライを献上。点差が広がる中でも自分たちの武器を捨てず、タックルで相手を止めてはモールを試みた。
渡辺大は後半に入ると相手の動きに疲れを感じた。9分にハーフライン付近で浮いたパスを空中で奪うとゴールへ猛ダッシュ。タックルもはねのけ、お株を奪うランから2トライ目を決めた。
持ち味を出しての敗戦は、花園ならではの体験だ。渡辺大は「ドライビングモールと自陣に敵を入れないエリア管理を磨いてほしい」と教訓を口にした。
■3年生への思いキックに込める フルバック引地
コンバージョンキックを2本決めた学法福島のフルバック引地巧真(2年)は「3年生をここで引退させたくなかった」と唇をかんだ。花園特有の雰囲気に重圧を感じたが、前後半のキックではボールだけに集中。3年生への思いを胸に蹴り込んだ。「またこの舞台に立つため、来春の新入生も含めて引っ張る」と中心選手の自覚を強めていた。
■得意のモールうまく機能 田中瑞己監督
前半終盤のトライの場面では得意のモールがうまく機能した。キック力の差が大きかった。
■空いたスペース突かれて失点 高宮康平主将
声をかけ合い前に出たが、空いたスペースを突かれて失点が重なった。ミスも多く出てしまい、悔しい。
■保護者らスタンドで応援
学法福島のスタンドには保護者や学校関係者、関西県人会員らが詰めかけ、最後まで諦めずにプレーする選手たちに大きな声援を送り続けた。
スクラムハーフ中川官泰(3年)の父剛男さん(48)は「休みも少ない中、厳しい練習を3年間よくやり通した」と息子たちの健闘をたたえた。「指導してくれた方々にありがとうと伝えたい」と感謝を口にした。
県人会の鎌田誠四郎専務(78)=田村市出身=は「敗れはしたが、心に残るトライを奪う姿から元気をもらった。今回の経験をばねに、さらに成長して花園に戻ってきてほしい」とエールを送った。