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【内堀県政10年】「挑戦」の真価問われる(1月5日)

2024.01.05 08:51

 内堀雅雄知事は4日の年頭会見で「県民が復興を実感し、未来に夢や希望を持てるよう全力で挑戦を続ける」と決意を示した。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興をはじめ、県政は長期に及ぶ課題を抱え、対策の加速化が求められている。内堀県政は今年で10年を迎え、力量が一段と試される。

 国の手厚い支援がある「第2期復興・創生期間」は2025(令和7)年度で切れる。終了後の復興財源の具体的な規模や制度の在り方は期限が迫っても示されないままだ。国と県の協議は正念場を迎える。原発の廃炉や避難地域の再生など山積する課題の現状を、県は強く訴えていく必要がある。

 帰還困難区域内では、特定帰還居住区域の除染が本格化する。大熊、双葉両町で着手したのに続き、他町村でも実施に向けた手続きが進んでいる。国は希望者全員を2020年代に帰還させるとしている。県は実現に向けた工程の早期明示を目指して働きかけを強めるべきだ。

 福島国際研究教育機構(F―REI、エフレイ)は浪江町に整備する本施設の設計に入る。建物が完成し、研究開発などの活動が形として見え始めるのは数年先になるだけに中・長期の視点に立った支援が不可欠だ。

 原発処理水の海洋放出は数十年先まで続くとされる。安全に関わるトラブルが生じれば、新たな風評が起きる可能性がある。県産水産物などを支える事業は放水完了まで手を抜けない。このほか産業振興、移住定住の促進、人口減と少子化対策、脱炭素の取り組み強化など本県の将来を左右する課題は尽きない。

 年頭会見に先立つ仕事始め式で、内堀知事は「原点回帰」と「意識変革」を掲げ、初心を忘れず情熱を燃やし続ける大切さを幹部職員らに強調した。安定志向は行政を停滞させるとして、時代の動きとともに意識を変化させる必要性も説いた。

 知事就任時から前面に打ち出してきた「挑戦」の姿勢は「シンカ(進化、深化、新化)」してきたとしている。10年の節目は、挑戦の真価も問われてくる。県政の現在地を多方面から総点検し、施策を進展させる取り組みが欠かせない。(角田守良)