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【エフレイ】成果示し認知度上げよ(1月17日)

2024.01.17 08:51

 昨年4月に開所した福島国際研究教育機構(F-REI、エフレイ)は、本格研究がスタートした。初年度としては「本業」は順調と言えるだろう。一方で県民に対する認知度は芳しくない。今後、外国人を含め500人に増える研究者の生活やその家族の教育環境の整備には課題が残る。

 エフレイはロボット、農林水産業、エネルギー、放射線科学・創薬医療と放射線の産業利用、原子力災害に関するデータや知見の集積・発信の5分野で世界最先端の研究開発に取り組む。浪江町の仮事務所を拠点に事務職員約70~80人の体制だが、徐々に増員される。最終的な研究者数の500人の3分の1は外国人となる見込みだ。

 事業は、外部委託による研究を軸に始まっている。直接研究の割合を増やし、7年後にはすべて「自前」とする見通しだ。すでに、農林水産業など5件で直接の本格研究に向けた準備に取りかかった。中でも森林内での放射性物質の循環を定式化する高精度モデル構築は、原発事故で設定された帰還困難区域の避難指示解除に大きな役割を果たす可能性がある。エフレイが世界にその存在を示す格好のテーマでもある。

 新年度からは研究開発の企画立案や事務作業などで研究者を支える専門職を採用する。専門性を生かして外部資金の獲得や手間のかかる申請作業などを手がけ、研究者が研究開発に専念できる環境を整えるという。国内でも推進しているが、人手不足の状況にある。専門職が活躍する国内最先端の拠点となるよう力を注ぐべきだ。

 一方、県民に対する認知度は一向に高まっていないと言わざるを得ない。開所直後の昨年6月に福島民報社と福島テレビが実施した県民世論調査では4割が復興貢献に期待しているものの、その名前や事業の内容を知らないのは76・2%に達していた。さらに昨年末に本紙が実施した読者が選ぶ県内十大ニュースでは、エフレイの開設は主要ニュース50項目中24番目だった。

 県民の認知度は圧倒的に不足している。充実、安定した研究開発には県民の理解が欠かせない。大学、高専などと結んでいる連携協定を異分野に広げていくことも、認知度を高める一手となるのではないか。(安斎康史)