福島相双復興推進機構(福島相双復興官民合同チーム)が被災12市町村での新事業に乗り出した。地方創生に関心のある首都圏の大学生らの起業や移住を支援し、被災地復興の担い手確保を目指すという。地方への若者の誘導策は各地で進められているが、独自性を発揮して成果を上げてもらいたい。
事業は「F12FLYプロジェクト」と名付けられた。東京では学生が集うコミュニティーを形成し、被災地12市町村では若手起業家との交流や現場体験・研修の場を設ける。15~20人を対象とし、自らが地元活性化につながるイベントなどを企画、実行して被災地への理解を深め、起業の可能性などを確かめる。
指導役として6人の「キーパーソン」を選んだ。大熊町に農業法人を設立した現役大学生や川内村で酒造りに取り組む20代らで、参加する学生に年齢が近く、個性も豊かな人材がそろった。起業意欲につながる指導に期待するとともに、経営リスクなどマイナス面もしっかりと伝えていくべきだろう。
官民合同チームは、関係人口の拡大や大学生を含む一般を対象とした移住促進事業を展開してきた。大学生観光まちづくりコンテストは2年間で約800人が被災地を訪れ、交流している。今回は関係を一過性で終わらせず、将来にわたって復興の担い手となる人材育成を目的に事業を構築している。一歩進んだ取り組みとして県や地元自治体との連携も重要だ。
こうした事業は、若者のUターン、Iターンに力を入れている全国の自治体が取り組んでいる。どう差別化を図れるかがポイントだろう。被災地は避難の長期化による人口流出と若者を中心とした人手不足、産業の創出など課題が山積している。これを逆手に「課題解決先進地」「柔軟な発想で何でもできる地」と位置付け、他にはない強みに転換できれば、意欲ある学生が集まるのではないか。
起業は簡単ではないし、起業後に持続的に収益を上げていくのはさらに厳しい。官民合同チームは、震災直後から被災地企業の再生に丁寧に対応する「伴走支援」で成果を上げ、全国のモデルにまでなった。今回の事業も「伴走支援」をどうアレンジできるか注目したい。(安斎康史)