「時間がない。一刻も早く進めるべきだ」。衆院選の日程が固まった30日、自民党県連の選対委員会に出席した県議の一人は焦燥感をにじませた。公示まで2週間。新2区は現職が不出馬を表明したばかりで、後継選考から体制を構築しなければならなくなった。新4区も現職が正式に引退を表明した。関係者は「想定していた準備の日程が崩れた」と嘆く。退くベテラン現職2人の存在の大きさが混乱に拍車をかける。
党県連によると、衆院選の福島県小選挙区のうち2選挙区で新人擁立となれば、2005(平成17)年以来19年ぶりとなる。党派閥の政治資金パーティー裏金問題を巡り有権者からは依然、厳しい目が向けられている。県内の党関係者からは「世代交代による刷新感をアピールできる」と好機と捉える向きもある。総裁選の盛り上がりや党本部役員の一新などの追い風が吹くうちに「新生・自民の候補者」を短期決戦の中で印象付けたいと思慮する。
ただ、今回は区割り改変後の初の衆院選となる。党への信頼回復と新人の浸透をどう進めるか…。時間はあまりにも足りない。新2区では現職が30日、支持団体に勇退の経緯を説明するとともに後継候補決定後の連携体制の協議を並行して進める場面が見られた。4区の新支部長に選ばれた新人を支援するいわき市の男性市議は大票田となるいわき市内での地盤固めと認知度が低い旧1区の浜通り北部での支持拡大を同時に進めなければならない難しさを指摘する。「スピード感を持って戦略を練らないといけない」と明かした。
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公明党県本部の幹部は30日、県内5地域で8日から開く時局講演会に向け、関係各所との調整を急いだ。「支持者に福島のさらなる復興への決意を訴える」と支持固めの狙いを明かす。
中央で連立を組む自民党の派閥裏金事件を巡り、県内の支援者からの不満は根強い。今回の選挙での「自民との距離感」の難しさを指摘する声もある。ただ、公明が比例東北で目標とする2議席確保を達成するには自民支持層の取り込みが欠かせない。選挙協力に向け、自民党県連と協議を重ねる。「さまざまな意見はあるが、今回も同じ形に落ち着くだろう」(党県本部幹部)と実情を語る。
党県本部は講演会の席上、自民の候補者に裏金問題に関する説明を求める考えだ。ただ、短期間でどれだけ信頼回復につながるかは不透明。幹部は「前例のない厳しい戦いになる」と腹をくくった。
衆院選の日程が固まり、県内各党は短期決戦に向けて一斉に走り出した。衆院選直前の各党の動きを追う。