長引く物価高の克服をはじめ、経済対策が衆院選の主な争点に浮上している。各党の選挙公約には低所得層への給付金や税額控除、消費税率引き下げなど、物価高に苦しむ国民を支援する政策が並ぶ。
「物価高対策を強化してほしい」。国見町の実家で両親と暮らし、福島市の食品製造会社でパート従業員として働く赤坂綺星(きらら)さん(23)は各党の支援策を見比べた上で、投票先を決めるつもりだ。
高騰の続く食料品や燃料の価格が暮らしを圧迫している。一家の食費だけを見ても、福島市の高校を卒業した5年前と比べて1・5倍に増えた。「この先、何があるか分からない」という不安を拭えず、月々の給料は家計に入れる分や生活費を除いて、ほとんどを貯蓄に回している。
大手企業の賃上げが報道されても、地方で暮らす自分の周りでは物価上昇に見合う所得の向上は感じられない。「若者が将来に希望を持てる状況を政治でつくってほしい」と注文する。
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与野党の公約の中には最低賃金の1500円への引き上げなど、将来の大幅な賃上げの目標値を示す文言も少なくない。ただ、原材料価格の上昇に苦しむ経営者にとって達成は容易ではない。
いわき市小名浜の洋菓子製造・販売業いわきチョコレート社長の柳沼大介さん(64)は「生産コストの上昇は深刻だ。商品の一部値上げも視野に入れなければならない」と頭を抱えている。
カカオ豆の世界的高騰を受け、直近のチョコレート1キロの仕入れ値は6月の2倍に達した。秋から年末はクリスマス用などチョコの需要が高まる。書き入れ時を前に値上げに踏み切れば客離れを生みかねない。
賃上げの社会的な要請は理解しているが、地方や中小企業に裾野を広げるには企業の実情に寄り添った支援が必要だと訴える。「賃上げ原資を工面するための借り入れ条件の優遇など、経営を下支えする政策を求めたい」と語った。
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鋼材の加工、販売などを営む東亜通商(郡山市)社長の高橋正子さん(64)は13日、市内で開かれた展示会で新製品を売り込んだ。「長引く円安で鋼材の仕入れ値が高騰している。為替の急激な変動を抑える政策を示してほしい」と望む。
商社から仕入れた鋼材を加工し、鉄工所や製缶業者などに出荷している。鋼材の原料となる鉄鉱石などは海外産であるため、為替の動向が材料費や収益に直結する。
円安の傾向が始まった2020(令和2)年と比べて仕入れ費は約2倍に跳ね上がった。コスト上昇分を自社の製品価格に上乗せした場合、取引先の理解が得られるとは限らない。中小企業の「体力」の強化が不可欠となる。「意欲ある企業が生き残れるように、設備投資への補助の充実を求めたい」と要望した。
15日公示、27日投開票で行われる衆院選は、経済の再生や東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興、産業の振興、人口減、医療・福祉など山積する難題への対応を、誰に託すのかを選ぶ機会となる。県内の有権者は今の社会に何を感じ、将来に向けて何を求めているのか。本格化する論戦を見詰めるまなざし、思いに迫る。