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【2024ふくしま衆院選 託す思い】運輸・物流 輸送力保てる政策を 交通網守る議論必須

2024.10.22 09:46
トラックからの荷降ろし作業を見守る蓬田さん(右)。暮らしを下支えする運送業界の負担緩和につながる政策を期待する

 トラック運転手らの残業規制は4月の導入から半年余りが過ぎた。長時間労働の是正が狙いだが、県内の運輸業者は働き方改革と並行しての輸送力の維持や人材の確保に頭を悩ませる。物や人を運ぶ物流・運輸業は生活に不可欠なだけに、各党は衆院選の公約に安定化対策を掲げている。関係者からは実情に即した支援策を望む声が上がる。


 二本松市の運送業福島倉庫は新規制に対応するため運転手の1日当たりの走行距離を最長500キロに制限した。社長の蓬田隆信さん(56)は「以前と同じ仕事量はこなせない。依頼を断らざるを得ない場合もある」と苦悩を明かす。

 1日約30人の運転手が関東圏や大阪、兵庫などの関西圏に飲料やガラス繊維を運んでいる。従来は500キロ以上離れた関西への荷物も荷積みの翌日に納品できたが、現在は到着までもう1日かかる。月々に運転手が搭乗できる日数も減り、需要に応えきれていない。

 幅広い産業で賃上げの動きが進む。輸送効率が下がる一方、同業者や他業界への人材流出を防ぐため、給与水準は維持しているものの、収支への影響は少なくない。在籍する運転手は50代以上が半数を占め、若者や女性を迎えるには労働環境の改善も課題となる。

 物流が滞る「2024年問題」対策として複数の業者が荷物を混載する共同輸送の試みが始まっている。ただ、地方や中小の業者にとっては物流拠点や協業先の確保が参画へのハードルとなる。蓬田さんは「打てる手は打っている。燃料費補助の継続や高速道路利用料の割引拡大など、少しでも負担が減る政策をお願いしたい」と求める。

   ◇    ◇ 

 流通の安定は、人口減や物価高の中で住民生活を支える小売店にも関わる。福島市飯野町で松崎魚店を営む松崎享司さん(52)は仕入れや配達を外部に頼らず、市場に自ら出向いている。「大量発注で経費を抑えられる大型店に値段では勝てない。お客さんに事情を理解してもらい、続けるしかない」と苦しい実情を明かす。

 昭和初期の創業から、商店街で鮮魚や食品、日用品を地域に提供してきた。2024年問題への小売り側の対応として同業者間で輸送費を抑える共同配送があるが、近隣に同業者のいない地域では協力相手が見つからない。「小さい店の生き残りを考えてくれる政治を求めている」と語る。

   ◇    ◇ 

 運転手不足は鉄道やバスなど人々の移動手段となる公共交通の将来にも影を落とす。いわき市の新常磐交通は4月のダイヤ改正で大幅な路線廃止に踏み切った。常務の門馬誠さん(73)は「市民の足を守るための苦渋の決断だった」と振り返る。運転手の高齢化に加えて新規採用が難航している。秋のダイヤ改正でも、いわき市と福島市を結ぶ高速バスの路線を運休する。

 労働環境の改善を図りつつ、大型2種免許の取得費を補助する市の制度を使って運転手を確保し、春に廃止した一部路線を11月から再開させる。明るい兆しもあるが、事業者の努力だけでは運転手や路線を保てる確証はない。門馬さんは「地方の交通網の維持は産学官が連携して本気で取り組むべき問題。国民的な議論を喚起してほしい」と訴える。