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【デブリ初回収】一層の技術力向上を(11月8日)

2024.11.08 09:27

 東京電力は7日、福島第1原発1~3号機に残る溶融核燃料(デブリ)を初めて回収した。本格的な採取を前にした試験的取り出しとの位置付けだが、最難関作業の第一歩を踏み出せた意義は大きい。今後、前例のない作業が長期にわたり続くだけに、今回の成果を技術の高度化、効率化とともに、安全性の向上に生かすよう努めてほしい。

 試験的取り出しは当初計画より3年遅れ、今年8月に着手を試みた。しかし、挿入するパイプの並び順を間違えたり、カメラに不具合が生じたりして作業を中断し、先月28日に再開した経緯がある。人為的なミスもあったにせよ、放射線量が極めて高い原子炉内での遠隔操作の難しさが改めて示された。失敗からの学びを実践的な知見に高める必要がある。

 回収したデブリは小粒ながらも、東電は原子炉内の状況を知る貴重な資料になるとしている。金属やコンクリートが混ざっていると予想されるデブリの性状把握は、新たな臨界防止などに欠かせないのは確かだろう。正確な放射線量が分かれば、作業員の被ばく対策も具体化できる。

 今後、茨城県内の研究施設に運ばれ、数カ月から1年程度をかけて詳細を調べる。正確な結果を導くのは重要であり、丁寧な分析は不可欠だ。一方で、廃炉の迅速化も踏まえ、時間軸を意識した対応も求めたい。

 試験的な取り出しの次回以降の予定は決まっていない。東電は初回の結果などを参考に、2回目の採取場所を検討する方針を掲げている。今回は見送ったロボットアームを導入するかどうかなど技術的な判断も注目される。内部を撮影するカメラが不具合を起こした原因究明など積み残した課題の解決も急がなければならない。

 回収を支えたのは、廃炉関連企業のたゆまぬ努力と言える。少量とはいえ、デブリを原子炉から持ち出した技術力は世界に誇れるのではないか。企業の取り組みを広く発信し、廃炉産業の発展にも結び付けたい。

 県民らが技術に触れ合う機会も設けられないか。関心の高まりは、長期を要する廃炉への理解醸成にとどまらず、技術者や作業員らの励みとなり、現場を後押しする力になるはずだ。(角田守良)