「釜石の奇跡」。岩手県釜石市鵜住居(うのすまい)地区の小中学生約570人が東日本大震災の津波から無事避難できた出来事を、そう呼ぶ。震災から14年となるのを前に、地方紙の若手記者研修に参加し、現地を取材した。感じたのは、防災意識を高める取り組みの重要性だった。(本社報道部・遠山蓮)
防災学習推進施設「いのちをつなぐ未来館」で当時の体験談を聞き、避難路追体験に臨んだ。震災当時、釜石東中2年だった同館職員の川崎杏樹さん(28)が案内した。川崎さんは「隣接する鵜住居小の子の手を引いて必死に高台へ逃げた」と振り返った。
釜石東中は2008(平成20)年度に文部科学省の防災教育協力指定校となり、防災を強化し始めた。小中合同の避難訓練では、時速30キロで走行する車を津波に見立て、児童・生徒が高台に急いだ。さらに自らハザードマップを作成。自宅周辺の安全な場所を把握し、万が一の際に冷静に行動できるよう心がけた。
2011年3月11日。大津波が迫ったが、子どもたちは大きなパニックに陥ることはなかった。釜石東中副校長の「走れ」の声で一斉に標高約50メートルの高台に向けて駆け出した。
ただ、地域住民ら586人が死者・行方不明者となった。川崎さんは「いつ起こるか分からない災害に向け、防災の大切さを伝え続ける」と話した。
福島県内でも津波で大勢の人が犠牲になった。津波と地震などによる直接死は約1800人に上る。命を守るために何をするべきか考えさせられた。県内外の教訓を受け継ぐことが大切だろう。
■被災者から経験談 全国若手記者が研修 JOD
福島民報社などが加盟する「オンデマンド調査報道(JOD)パートナーシップ」の「東日本大震災『#311jp』記者講座@岩手」は18~20日に開かれ、東日本大震災で高さ約17メートルの津波が襲った岩手県宮古市田老の津波遺構「たろう観光ホテル」や、釜石市鵜住居町を訪れ、被災者に当時の経験談を聞いた。
震災後に入社した若手記者の研修の場として、被災地での取材を通した教訓継承、同世代との交流を目的に企画された。全国16社から約20人が参加した。