福島民報社は福島テレビと共同で福島県民世論調査(第48回)を実施した。東京電力福島第1原発事故に伴う除染土壌の中間貯蔵施設への搬入開始から10年。法律で定められた県外での最終処分に向けて重要となる除染土壌の再利用について、県内での実施に「賛成」は37・0%、「反対」は35・2%と意見が分かれた。安全性の見解も「安全」と「不安」がともに4割台で大きな差はなかった。再利用などの理解醸成の取り組みは「県内外とも不十分」が43・7%で最多となり、国の発信力強化が求められている。
県外最終処分は日本環境安全事業株式会社(JESCO)法で2045年3月までと定められている。処分量を減らすために重要とされる放射性物質の濃度が比較的低い土壌の再利用については場所などが明確に規定されていない。土壌を県内で再利用することへの考えの回答は【グラフ(1)】の通り。「わからない」は27・8%だった。
除染土壌の再利用に向けた安全性への見解は【グラフ(2)】の通り。「安全だと思う」31・8%と「十分、安全だと思う」17・3%を合わせると49・1%になった。「安全性に少し不安がある」33・5%と「安全性に大いに不安がある」10・0%の合計は43・5%。再利用の賛否と同様、受け止めが分かれた。
県内で再利用することへの回答と安全性への見解の関連を分析した結果は【表】の通り。「賛成」とした人の75・7%が「安全だと思う」「十分、安全だと思う」と考え、「反対」とした人の64・4%が「安全性に少し不安がある」「安全性に大いに不安がある」とした。再利用と安全性への受け止めが一定程度、連動しているのが分かる。
除染土壌の再利用などの理解醸成に向け、環境省は全国での対話集会や中間貯蔵施設の公開などに取り組んでいる。ただ、関東地方での再利用の実証事業計画は地元の反対により頓挫した。国の理解醸成の取り組みへの評価は【グラフ(3)】の通り。「県内外とも不十分」が43・7%で最多となった。「県内では広がっているが、県外での理解は不十分」は29・8%。「県内外で十分に取り組まれている」は11・8%にとどまった。全国的な理解醸成の取り組みの推進を県民は求めている。
除染土壌の県外最終処分を巡っては環境省が新たな工程表案を示したが、道筋がいまだ不透明との指摘もある。双葉町の伊沢史朗町長は国民の理解を得るため、個人的な見解として県内での再利用実施にまずは取り組むよう言及した。