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【今を生きる】被写体、希望も苦しみも 福島県相馬市の写真家西村さん 11日から個展 震災被災者の心伝える

2025.03.07 10:45
写真展の準備を進める西村さん。災害の記憶をつなぐ決意を固めている

 東日本大震災や台風19号、2度の福島県沖地震からの復興を願い、福島県相馬市の写真家西村昌也さん(40)=星写真舘社長=が11日、市内の正西寺で初の個展を開く。災害を乗り越え強く生きる人、今でも苦しむ人を被写体にし、被災地の現状や記憶を後世に伝える決意を表現した。

 相馬市で生まれ育った西村さんは2007(平成19)年に星写真舘に入社すると、家族写真などの撮影に携わった。2011年の震災で、仕事内容が一変した。罹災(りさい)証明書に添付する損壊家屋の写真や、津波で亡くなった人の遺影作りの依頼が舞い込んだ。被災者の悲しみや怒りを受け止めながら撮影に臨む日々が続いた。

 震災発生から1年後、小学校卒業を記念した女児の撮影依頼があった。楽器が好きでたまらない女の子、子どもに対する深い愛情を見せる付き添いの両親の姿が印象的だった。震災を経験しても明るい未来を思い描く子どもにレンズを向け、何度もシャッターを切った。「技術に頼った撮影をしていた」という仕事への向き合い方が変わった。人の思いをくみ取り、心情を表す写真を撮っていくと決意。その時の作品「たからもの」を展示する。

 災害のつらい経験から抜け出せない人も写真展で取り上げる。「災害の記憶」は自分の息子を被写体にした。今でも地震や洪水の映像を目にすると、過剰なほどにおびえてしまうという。暗い表情と、台風19号と福島県沖地震の被害の様子をサングラスに映す加工で、胸の内を表現した。「傷ついた心に寄り添い、支えることが必要だ」と訴える。

 写真展は20日まで開かれ、20点を展示する。時間は午前10時から午後3時まで。西村さんは「震災を次の世代に伝え、見た人の心に残る写真展にしたい」と語っている。