東日本大震災と並ぶ最大クラスの津波に備え、福島県は28日、沿岸10市町の津波浸水想定区域を避難対策を強化する津波災害警戒区域(イエローゾーン)に県内で初めて指定する。自治体などは津波が建物に衝突してせり上がる高さを含めた基準水位を新たに把握できる。より精度の高いハザードマップの策定につなげ、人命を守る。
警戒区域は2011(平成23)年に施行された「津波防災地域づくりに関する法律」に基づき、県が指定する。いわき、相馬、南相馬、広野、楢葉、富岡、大熊、双葉、浪江、新地の10市町の津波浸水想定区域が対象となり、想定面積は最大1万3885ヘクタールとなる見込み。
浸水想定区域の津波水位は、建物が立地していない前提で算出していた。指定に伴い、県は建物の立地を考慮して試算した津波高を、10メートル四方ごとに示す。このため従来よりも津波水位が上昇する可能性がある。
警戒区域内への指定に伴う、住宅などの開発行為や建築の制限は生じない。最大規模の津波襲来時に確保すべき建物の高さが明確になる。津波避難タワーや高台避難地といった避難施設を整備する際、国から最大2分の1の財政補助が受けられる。
県によると、指定を受けた自治体は警戒区域内の学校や医療機関、介護施設などを地域防災計画で避難促進施設に位置付ける。避難促進施設の管理者は、これまで努力規定だった避難計画の作成と避難訓練の実施が義務化される。
県は(1)三陸沖を震源とする震災級の地震(M9・0)(2)房総沖が震源の地震(M8・4)(3)岩手県沖から北海道・日高沖に続く日本海溝の地震(M9・1)(4)十勝沖から千島列島沖への千島海溝の地震(M9・3)によって発生する津波を最大クラスとして設定している。
津波被害の恐れがある40都道府県のうち、福島県を含む14都府県が未指定。福島県は東日本大震災により沿岸部の防潮堤などが損壊したため、復旧・整備を優先。工事完了のめどが立ったことから、県は沿岸自治体との協議を経て指定を決めた。指定後、県ホームページに図面を掲載する。
今後は、実効性ある避難対策を講じることができるかが課題となる。いわき市災害対策課の担当者は、避難計画の策定に向け、支援の在り方を検討するという。南相馬市危機管理課の担当者は「住民には過剰に恐れず、正しい理解を促す」と話している。
県河川計画課は「広報を通じて、警戒区域の周知に取り組んでいく」としている。