県は今月、温室効果ガスの排出量削減に向け「ふくしまJ―クレジットクラブ」を発足させた。県民や企業の加入を促すには、脱炭素への関心や意欲をこれまで以上に高める工夫が必要になる。
県は2050年度までに、温室効果ガスの排出ゼロを目指すと宣言している。工程表を設け、およそ10年ごとの目標値を設けている。2030(令和12)年度の排出量は、比較基準の2013(平成25)年度の50%減を目指しているが、2022年度の減少率は21・3%だった。今後、年間4%程度の上積みが必要だが、「削減が実践されているのは県内の一部にとどまっている」との認識で、現状のままでは達成は困難とみている。
取り組みを進めるために設置されたクレジットクラブは、排出削減量を国が認証し、市場で売買するJ―クレジット制度を活用する。県の補助金を受け太陽光発電を設置した家庭、発光ダイオード(LED)照明などを導入した事業所に加入を呼びかけ、削減分を県が取りまとめて企業などに売却する仕組みだ。収益は脱炭素化に向けた施策の財源に充てる。特に、県内の排出量の8割を占める企業の加入をいかに促せるかが重要になる。
とうほう地域総合研究所が昨年夏、県内企業を対象に行ったアンケートで、回答した462社のうち脱炭素の取り組みの必要性を認めているのは6割に上ったが、7割は排出抑制に取り組んでいないとした。「何をすべきか分からない」との声が多く寄せられた。有識者をアドバイザーに委嘱し、具体的な削減策を周知しながらクラブへの加入を促すといった活動を進めるのも一案だろう。
研究所は「脱炭素の取り組みは大きなうねりになっていない」と指摘した。企業側に何らかのインセンティブ(動機付け)がなければ、排出量削減の流れをつくるのは難しいのではないか。クラブ加入を条件とした公共事業の入札での優遇、関連設備を導入した場合の運転資金の支援なども検討してほしい。
森林の二酸化炭素を吸収した量をクレジット化して販売し、収益を森の整備に充てている県もある。本県の森林面積は県土の約7割を占めており、こうした先行事例にも学びたい。(渡部総一郎)