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余波(5月25日)

2025.05.25 09:05

 誰もが広く理解している漢字の表現とは言いがたい。「なごり」は「名残」だけでなく、「余波」とも書く。風が静まった後も、しばらく波が立っている状態を指すという▼転じて、実にさまざまな言葉が生まれてきたようだ。名残の月は夜明けの空に残り、去りゆく愛[いと]しい人を惜しむよう。名残の霜は八十八夜の頃に降る。別な呼び名は、夏に向かう時節の別れ霜。フォークの名曲「なごり雪」。季節の節目を人生の転機に重ね合わせ、国民的なヒット曲となった。別れのさびしさを「あはれ」と捉える、日本人の感性がにじむ▼愛用した品々に離れがたい思いがこもる。福島市で6月1日に開かれ、まちのシンボル信夫山を駆け抜けるランニングレース。約900人の参加を予定しているが、今年初めてシューズの供養を催す。神社の宮司が祈禱[きとう]し、炊き上げる。慣れ親しんだ「相棒」をごみにするのは名残惜しい―。関係者の思いがこもる▼こちらは、昨今の節約事情が後押ししている。捨てるはずの野菜の根や芯を水に浸して育て、再び収穫するリボベジだ。家庭で静かなブームを呼んでいる。せつないやりくりでもある。物価高の余波[よは]と思えば、出るのはため息ばかり…。<2025・5・25>