全国高校総体(インターハイ)サッカー競技男子は本県での固定開催2年目を迎え、7月26日に開幕する。昨年は敗退したチームが早々と帰路に就くケースが目立った。選手がホープツーリズムなどに参加し、被災地の現状に触れる機会が増えれば、大会の意義は大きく高まる。滞在期間を延ばし、県内を巡る仕掛けづくりを検討してはどうか。
本県での固定開催には暑熱対策に加え、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の記憶と教訓を全国の若い世代に伝える狙いがある。昨年は52チームが参加したが、宿泊施設関係者によれば、トーナメントで敗退し翌日や翌々日、地元に戻る「負け帰り」が多かった。
敗退したチーム同士による交流試合や地元住民と触れ合うイベントがあれば、滞在日数も増え、地元の観光関連業界に恩恵も生まれる。昨年、実行委員会は勝ちを逃したチーム同士の練習試合を組んだ。今年は県内高校も対象に加える方向で調整している。全国レベルの実力校との対戦は、本県高校サッカー界全体の実力の底上げにもつながる。
主会場のJヴィレッジ(楢葉・広野町)では、16歳以下を対象とした「ルーキーカップ」を期間中に開催する。参加者はインターハイ決勝を観戦する仕組みとなっており、こうした取り組みも宿泊者数、宿泊日数の拡大に通じるだけに、歓迎したい。
昨年は全国から約2万人が期間中に会場を訪れた。こうした来県者が数日間、被災地を中心に県内を巡るツアーがあれば、復興への歩みを進める本県の現状を知ってもらうきっかけになる。まず、震災学習や復興体験プログラムを通して教訓を得るホープツーリズムへの参加呼び込みを強めたい。昨年の参加は、1チームにとどまった。1カ月余後の開会に向け、各校への情報発信を強化すべきだ。
中通りや会津地方にも足を延ばし、本県の歴史や自然、文化に触れる周遊ルートを設けるのも一案だろう。多様な魅力に触れてもらえば、生涯にわたって訪れる足掛かりにもなる。福島開催を将来に向けて確実に根付かせるためには、おもてなしの力を高める努力も求められる。県と市町村、観光業界、民間団体が連携し、受け入れ態勢を充実させてほしい。(渡部純)