参院選で主要政党は県版政策(公約)を発表している。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興加速に加え、地域づくりの基盤となる人口対策にも重点が置かれている。先月、閣議決定された地方創生の基本構想は、人口減少を前提として各種施策を講じる方向へと大きくかじを切った。こうした国の方針に対して積極的に議論を交わし、本県の持続可能な発展策を県民に示してほしい。
基本構想は今後10年の指針で、若者や女性に選ばれる地方をつくり、東京圏から移住する若者を倍増させる目標を掲げている。仕事や趣味を通じて地方と関わる「ふるさと住民」の登録制度を設け、1千万人を目指すとした。さらに特徴的なのが、「人口減少を正面から受け止める」と明記した点だ。人の先細りへの歯止めを念頭に置きつつ、東京圏からの地方移住や若い世代の結婚、出産、子育てを後押しするこれまでの考え方を改めた。国の方向転換に、地方はどう対応するかが問われ始めたと言える。
県版公約では、地方創生策として魅力ある職場づくり、健康経営、デジタル社会の実現、移住者の受け入れ態勢整備などといった項目を盛り込んだ政党がある。人口減少対策として、若者や女性の視点に立った結婚、出産、子育て支援の充実に向けた訴えもある。いずれも県内の現状を踏まえた内容だが、どうしても人口の維持・拡大の観点からの発想に偏ってしまってはいないだろうか。
厚生労働省の関連機関は、2050年の本県人口は124万人と見込まれ、現状から3割減少するとの試算を発表した。65歳以上の高齢者が占める割合は4割を超えるとしている。全国の市町村それぞれが都会からの移住者獲得に躍起となっている現状で、新しい住民を増やして減少分を補い、社会基盤をどれだけ維持していけるかは極めて不透明だ。やはり、暮らす人が減る想定の上で、各地域に合った振興策を考えていく必要があるだろう。
県版政策で、原発事故に伴う除染土壌の県外処分に向けた取り組み強化も約束している党もある。他県での理解醸成をいかに図り、実現に結び付けていくのか。有権者は具体的な道筋を提示するよう求めている。(渡部総一郎)