国の脱炭素先行地域に県内市町村で唯一指定されている会津若松市で、ヨークベニマル(郡山市)が市内の花春店を二酸化炭素(CO2)排出量実質ゼロの店舗に改修した。温室効果ガスの排出削減に向けては、排出量の多くを占める企業の努力が欠かせない。先行事例を参考にしつつ、それぞれの事業所が可能な範囲で脱炭素の取り組みを広げてもらいたい。
国は福島県と会津若松市を含め40道府県、115市町村を脱炭素先行地域に選定している。先行地域以外の重点対策加速化事業の対象には県内で喜多方、南相馬、広野、浪江4市町が認定されている。脱炭素に伴う施設整備費などへの補助率は先行地域が3分の2、加速化事業が2分の1となっている。まずは会津若松市と4市町が県内のけん引役として管内の企業に脱炭素の重要性を訴え、補助事業を周知してほしい。
会津若松市では花春店を含む鶴ケ城周辺、会津アピオ周辺、湊町全域が先行地域になっている。花春店は人感センサー付きで照度調整ができる発光ダイオード(LED)、屋根に太陽光パネルを設置し、空調を高効率機器に更新した。会津エナジー(喜多方市)などと連携し、発電時にCO2が発生しない再生可能エネルギー由来のフリー電力を使う。CO2排出量実質ゼロは市内の商業施設と同社の全249店で初めてとなった。
脱炭素に向けてエネルギー効率の良い冷暖房と照明設備、太陽光発電を導入するには高額な費用負担が発生する。大企業に比べて資金的余裕が少ない中小企業は容易に投資に踏み切れないのが実情だろう。脱炭素に関する豊富な知識を持った専門人材からの助言も必要となる。
県は温室効果ガスの排出量を2050年度に実質ゼロにする目標を掲げているが、2022(令和4)年度の実績は基準年度の2013年度に対して21・3%の減少率にとどまる。現状では目標達成への道のりは険しいといえる。中小企業は交換時期が来た照明器具をLEDに替えたり、使用電力に再生可能エネルギーを導入したりするなど、各種補助金を活用し、できるところから取り組んでほしい。そうした実践は、自社に対する社会的評価を高めることにもつながる。(風間洋)