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【エフとも】「学びの地」育む協働を(8月5日)

2025.08.05 09:12

 福島国際研究教育機構(F―REI、エフレイ)が県内の教育、科学、文化に関わる公的機関などに呼びかけて設立した「エフとも」が始動した。参画団体が協力して若い世代を対象にした出前授業などに取り組み、エフレイの機能の一つである人材育成を目指す。2030(令和12)年度までのエフレイ本格稼働を見据え、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の被災地を名だたる学びの地にする気概で協働してほしい。

 エフともは県、県教委、浜通りを中心とする市町村、大学、まちづくり機関など34団体で組織され、浪江町に本部を置くエフレイが事務局を担う。名称は「エフレイとそのともだち」を意味し、今年度は小中学生向けのサイエンスラボ、高校での出前授業、大学・高専生ら対象のインターンシップ(就業体験)などに取り組む。いずれも参画団体が個別に手がけてきた事業を基に、エフレイや各団体が知見や人材などを補い合って活動効果を高めるという。

 エフレイは福島復興再生特別措置法に基づいて設立された特殊法人で、(1)ロボット(2)農林水産業(3)エネルギー(4)放射線科学・創薬医療と放射線の産業利用(5)原子力災害に関するデータや知見の集積・発信―の5分野での研究開発と産業化に加え、人材育成を担う。こうした機能は、地元の浜通りでも広く周知されているとは言い難い。エフともは子どもたちをはじめ多くの人が興味を持てるような情報発信を意識し、エフレイと地域の距離を縮める役割を果たしてもらいたい。

 浪江町で4月に開かれたエフレイ設立2周年記念シンポジウムでは、相双地方の児童・生徒から「災害に強い家」「無限のエネルギー」などさまざまな研究を望む意見が寄せられた。固定観念にとらわれず、幅広いアイデアを生かす姿勢は欠かせない。エフともの出前授業などが、みずみずしい芽吹きを探り当てる場になるよう願う。

 エフともは随時、入会を募っている。組織を充実させて成果を上げるには、未加入の市町村、若者が関わる団体などに活動意義や今後の方向性を説く必要がある。仲間の輪を広げるプロセスは、本格的な復興に不可欠な地域コミュニティーの再生にもつながり得る。(渡部育夫)