水産大手のマルハニチロ(東京都)は9日、事業的規模でのサンマの試験養殖に成功したと発表した。サンマの卵を出荷目安である100グラムを超える成魚まで育てた。同社によると世界初という。世界で初めて水槽内でのサンマの繁殖に成功したいわき市のアクアマリンふくしまが、卵の提供や飼育面での技術支援などで協力した。同社は「早期事業化、安定供給に向けて技術向上を図っていく」としている。
サンマの飼育研究に取り組んできたアクアマリンふくしまは2023(令和5)年10月、マルハニチロ養殖技術開発センター(本社・鹿児島県)にサンマの卵数千粒を提供した。陸上水槽で研究に着手した同センターはこれまでのクロマグロやブリ、カンパチ、マダイなどで培ってきた技術や研究開発の経験を基に試験を重ねた。手法の確立に向けても適切な給餌や温度管理などアクアマリンが培った知見が生かされた。
アクアマリンふくしま学芸員で今回の試験養殖に関わった山内信弥さん(51)は「(これまでなかった)養殖ができるということが証明され、とてもうれしい。専門性の高い企業だからこそできたと思う。サンマの研究にとって大きな一歩だ」と笑顔で話した。
サンマは近年、不漁の傾向が続いていた。ただ、全国さんま棒受網漁業協同組合(東京都)によると、8月の全国のサンマ水揚げ量は約5千トンで、昨年同時期の2倍ほど。9月の水揚げ量は8日までにすでに約5千トンで、わずか1週間で8月の水揚げ量と同じ量になっているという。