福島県富岡町の居酒屋EBISU(エビス)は12日でオープン1周年を迎える。町民や各地から仕事で町に訪れる人たち、さまざまな背景のある人が酒を交わして交流を深めている。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興が進みながら空き地が目立ち、暗闇と静けさが広がる富岡の夜に明かりがともり、笑い声や歌声が広がる。「楽しいから毎日来ちゃう」。アットホームな雰囲気をほろ酔いの常連客がたたえる。
「居酒屋を通して町を活気づけて盛り上げたい」と代表の高木広美さんが店を構えた。いわき市在住だが震災後に富岡町の飲食店で働いていた。復興が進む町内ながら店の数は少ない。楽しい時間を過ごしてもらえる場所を新たに作ると決意した。スタッフ全員がいわき市から通い、店を切り盛りする「怒濤の1年」を過ごしてきた。
メヒカリやカツオなど新鮮な魚に串焼き、豊富な酒やカラオケも楽しめる店は人気を集めている。3年ほど前に古里に帰ってきた男性客は「おいしいのはもちろん、手際がよくて面白いスタッフがみんなファンなんだ。こんなお店が本当にありがたい」と語る。キッチンが見えるカウンター越しに軽快な会話が行き交う。高木さんをはじめ、ざっくばらんで笑いに包まれる店の雰囲気を愛して、再び足を運ぶ客も多い。
復興関連の作業員など仕事で町内に滞在する人も店での晩酌を力に変えている。仕事で町内に移り住んできた男性はほぼ毎日通う常連客だ。「楽しい店で客同士の交流も生まれる。だから毎日来たくなる」と笑う。北海道から沖縄県まで多様な背景を持つ人が訪れているといい、新たな活気が生まれている。高木さんは「ここに来ればあの人がいると楽しみに来て癒やされる店であり続けたい」と意気込んだ。
1周年を記念して12日は来店から1時間、ビールとサワー各種、ソフトドリンクを半額にする。住所は富岡町中央1丁目179。時間は午後5時~同11時(ラストオーダーは食事が同10時、飲み物が同10時30分)まで。日曜と祝日が定休。問い合わせはエビスへ。
(相双版)