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創業101年、福島県の喜多方ラーメン元祖 「源来軒」歴史に幕 後継者見つからず

2025.09.25 11:30
店頭に張られた閉店を伝える張り紙
24日で閉店した源来軒。喜多方ラーメンの元祖として味を守り続け、全国の多くのファンから愛された

 日本三大ラーメンの一角を担う福島県の喜多方ラーメン発祥の店として全国から愛された喜多方市の老舗「源来軒」は24日閉店し、101年の歴史に幕を閉じた。後継となる作り手が見つからなかった上、時代の変化とともに昔ながらの製法を守ることが難しくなり、店じまいを決めた。ご当地ラーメン先駆けの地である市内では近年、人気をけん引した有名店が次々とのれんを下ろしている。市は後継者の獲得と就業支援などに力を入れる方針だ。


 「臨時休業しておりましたが、再開の目途がたたないため、閉店することになりました」。24日、源来軒の入り口に突如、店じまいを知らせる張り紙が出され、常連をはじめ市民を驚かせた。3代目代表の近重幸代さん(61)は「事前に告知ができなかったのは残念だったが、多くの人に愛してもらったことに感謝したい」と名残惜しそうに話した。

 源来軒は1924(大正13)年、中国・浙江省から喜多方に渡った初代の潘[ばん]欽[きん]星[せい]さんが屋台として始めたのがルーツで、喜多方ラーメンの「元祖」として知られる。開店前の未明から準備を始め、昆布や煮干し、げんこつ、香味野菜をベースにしたうまみたっぷりのスープなどを、作り置きをしない昔ながらの製法で作り続けた。開店前から行列のできるほどの市内を代表する人気店の一つで、芸能界にもファンは多い。

 2代目の星欽二さんの長女である近重さんは父が病気がちになったのを機に2017(平成29)年に地元に戻った。訪れる客の笑顔と感謝の声にやりがいを感じる日々を過ごしていた。ただ、現在の調理を担う叔父の高齢化などもあり後継者を探したが、父や叔父と同じ熱量と覚悟を持って店を続けられる作り手を見つけるには至らなかった。原材料を吟味した伝統の製法も原価率の高さなどによって続けるのが難しくなった。2023(令和5)年に死去した星さんからは「店の味を守れなくなったら店を閉めてほしい」と伝えられていたことから悩んだ末、年末を予定していた閉店の前倒しを決めた。

 近重さんは今後、店の利活用も含めて検討する予定だ。「閉店後も少しでも喜多方ラーメン振興の力になれるのであれば協力したい」と店を支えてくれた地元への思いを語った。


■ラーメン課設置 事業承継マッチング 市が支援に力

 喜多方市は約100のラーメン提供店が軒を連ねるが、近年は店主の高齢化や後継者不足などが老舗の課題となっている。

 2021(令和3)年にあべ食堂、2023年にはまこと食堂、今年8月31日には丸見食堂と有名店の閉店が続く。協同組合蔵のまち喜多方老[らー]麺[めん]会[かい]の加盟店も協同組合となった2005(平成17)年当時の45店から32店まで減少した。関係者によるとライフスタイルの変化により、担い手を育てることの困難さが増しているという。市は昨年、喜多方ラーメン課を新設した他、事業承継のマッチングなどの支援策に力を入れている。

 一方、ミシュランガイド東京受賞店が後押しする店ができるなど喜多方ラーメンに新たな風も吹き始めている。老麺会の花見拓代表理事は「人気店の閉店は残念だが、各店の都合もある」と事情を踏まえた上で「市や新店とも協力し、喜多方ラーメンを盛り上げていきたい」と語った。