違法なオンラインカジノ賭博を公表した福島市在住のお笑い芸人フジナッツ健さん(42)は、福島民報社の取材に「ゲームのような感覚ではまってしまった」と吐露した。刑事罰は見送られたが、芸能活動は自粛に追い込まれ、社会的な制裁を受けた。賭ける模様をインターネットで実況中継していたことも打ち明けた。「視聴者が(オンラインカジノを)始めるきっかけをつくったかもしれない」と反省を口にしている。
5年ほど前、オンラインカジノの動画を視聴したのがきっかけだった。スマートフォンやパソコンから流れる小気味よい効果音ときらびやかな映像。海外のカジノリゾートにいるかのような没入感が、魅力的だった。興味を抱き、課金してスロットを試した。興奮が押し寄せ、夢中になるまで時間はかからなかった。当時、違法とは思わなかった。
1回当たり2万~3万円をつぎ込み、月1回のペースで続けた。「低額から高額まで自由に賭け金を選択できるのも良かった」と振り返る。動画投稿サイトでゲーム実況を配信しており、オンラインカジノ中継が人気企画になると見込んだ。
予想通り、視聴者数はゲーム実況よりも伸びた。常時2千~3千人、多い時で5千人超が接続した。日本からオンラインカジノを利用する行為が違法だと知ったのは、始めて2年後。視聴者から指摘されたという。
国内での利用は諦め、合法である東南アジアの国で配信を続けた。約3年間、3カ月に1度、渡航していた。配信による広告収入が、賭けて失った金額を上回る好調ぶりだったからだ。
今年に入り、違法にオンラインカジノをした芸能人やスポーツ選手の摘発が相次いだ。社会問題化している状況を踏まえ、3月に警察に自首した。5月に賭博容疑で書類送付され、7月に不起訴処分となった。
仕事は半年ほどキャンセルになった。今夏、ラジオ番組への復帰をようやく果たしたが、社会に影響のある立場にありながら軽率な行動を取ったことを悔いる。「二度と同じ過ちを繰り返さない」と強く誓っている。
■新規開設や宣伝禁止 法規制強まる 既存HPは強制遮断検討
警察庁によると、違法なオンラインカジノの利用経験者は推計で約337万人に上る。利用が拡大した背景には、インターネットや交流サイト(SNS)での紹介や宣伝があるという。
法規制は強まっている。改正ギャンブル依存症対策基本法が25日に施行された。オンラインカジノサイトの開設・運営を禁止した他、「おすすめ」などと紹介するサイトを作ったり、SNSで宣伝したりする行為を禁じた。
ただ、既存のサイトがインターネット上に存在し、アクセスできる状態にある。利用防止に向け総務省の有識者検討会は、サイトへの接続を強制的に遮断する「ブロッキング」の可否について検討を進めている。
公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会(東京)の田中紀子代表は、賭け事の結果が素早く出るオンラインカジノは他のギャンブルと比べ依存症になるリスクが高いと指摘する。「対策強化と同時に、相談や医療機関で治療をしやすくする仕組みの整備が必要だ」と強調している。