東京電力福島第一原発事故に伴う福島県富岡町の帰還困難区域のうち、来春の避難指示解除を目指す特定復興再生拠点区域(復興拠点)で11日、帰還に向けた住民の準備宿泊が始まった。6町村に設定されている復興拠点では葛尾村、大熊町、双葉町に続き4例目。
町によると、10日までに9世帯11人から宿泊の申請があり、11日は2世帯3人が宿泊の手続きをした。
準備宿泊の対象となるのは町内の夜の森地区を中心とした復興拠点約390ヘクタール。対象者は3月1日現在、1431世帯、3553人となっており、52世帯が宿泊を希望している。1月26日に立ち入り規制が緩和され、許可証なしで立ち入りができるようになった。
■帰還へ一歩 「やっとここまで来た」 小野耕一さん 福島県富岡町の準備宿泊
「やっとここまで来られた」。福島県富岡町夜の森地区に自宅を構える小野耕一さん(74)=郡山市に避難=は部屋を掃除しながら、帰還に向けた一歩を踏み出せた喜びを口にした。
原発事故で長年暮らしていた夜の森地区を離れた。避難先を転々とした後、郡山市に落ち着いた。同市に有志が開設した「おだがいさま工房」で草木染を学び、現在は同工房の代表を務めている。月曜日の朝に、楢葉町に移転した工房に向かい、金曜日の夕方に郡山市の避難先に戻る生活を送っている。来春の避難指示解除に合わせて、工房を自宅に移す予定だ。
電気や水道などは復旧しているが、給湯器が壊れているため、この日は自宅に宿泊しなかった。修理でき次第、妻繁子さん(75)とともに泊まる予定だ。「避難指示解除までには戻ってきたいと思っている」と述べ、「先駆けて町に戻り、町民の帰還を促すきっかけにしたい」と願っている。