福島県は日本・千島海溝の大地震による津波想定を踏まえ、浸水想定区域を2019年以来3年ぶりに見直し、31日に公表した。東日本大震災で津波被害を受けた沿岸地域では道路のかさ上げなどが進み、浸水想定区域全体は1万3885ヘクタールで前回より411ヘクタール(2・88%)減少。このうち約1094ヘクタール(8%)で浸水の深さは浅くなった。一方、防災林や道路で津波がせき止められるなどし、深くなる場所が約120ヘクタール(1%)増えた。内陸でも局地的に深くなるケースがあり、県は沿岸10市町にハザードマップの改定などを促す。
県は今回、復興事業が進んだ2020(令和2)年度末の地盤データを使い、三陸沖を震源とする東日本大震災級の地震(M9・0)、房総沖が震源の地震(M8・4)、岩手県沖から北海道・日高沖に続く日本海溝の地震(M9・1)、十勝沖から千島列島沖への千島海溝の地震(M9・3)-の4地震を想定して分析した。
県は沿岸10市町の各海岸を14分割し、【図】の黒線の23地域ごとに浸水想定区域をまとめた。津波浸水の想定範囲は赤の部分で、最大1万3885ヘクタールと試算された。三陸沖と房総沖を解析した2019年3月の前回との比較では、沿岸10市町全てで想定範囲は狭くなった。ただ、東日本大震災で浸水被害を受けた約1万1200ヘクタールよりも被災規模が大きくなるのは改めて示された形だ。
浸水が局地的に深くなる現象について、県は津波が東西に延びる道路に衝突したり、防災林で向きを変えられたりすることで生じるとみている。防災林や道路整備の進展で現象が起きることは想定はしていたが、具体的にどの場所で発生するかは事前に予測するのは難しかったという。
県は沿岸10市町にこの結果を通知し、被害防止に向けた対策の検討を働きかける。県民に向けては「水位が増した状態では徒歩や車での移動が難しくなる。早期の避難を心がけてほしい」と訴えている。
県は31日、県河川計画課のホームページで県内の浸水想定区域を公開した。