福島県内の大学や短大、高専などを卒業した若者の半数が県外で就職している。福島労働局が5月に公表した今春の新卒者内定状況によると、就職を希望した4227人の53・4%に当たる2256人が県内で就職内定を得た一方、46・6%の1971人は県外での就職を選択した。2002(平成14)年の統計開始以来20年間、傾向は変わっていない。
県が2019年に県内や首都圏の大学、専門学校などに通う県内出身者ら約1400人を対象に実施した調査で、最多の45・7%が将来働きたい地域を「福島県内」と答え、次いで「関東」が27・3%だった。学校の所在地別に分析すると、県内の大学などに通う県内出身者の約6割が「県内」を選択。県外の大学などに通う県内出身者の半数以上が「関東」と回答した。
県内のさまざまな分野の担い手となる人材を育てるために、高等教育を受けた若者のUターン・Iターン就職をどう促すかが長年の課題だ。県は首都圏に進学した県内出身者ら向けの企業説明会を催し、古里で働く魅力を紹介しているが、首都圏の企業に人材が流れている現状がある。県内の経済関係者からは事業承継や人手不足を危惧する声が上がる。
東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の被災地で人材育成事業に取り組む丹波史紀立命館大産業社会学部教授は「県内に若者を定着させるのも大学や地域の役割だ」と指摘。県に対し「地域や県外の大学との調整役を担い、学生が県内で学ぶ際、宿泊や移動に要する費用を補助して環境を整えるべきだ」と求める。
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ただ、高等教育への進学率は全国平均を下回っている。昨年5月1日時点の大学進学率は47・7%で前年同期より1・9ポイント増えたものの、都道府県別では36位だった。全国の57・4%より10ポイント近く低い。
地理的制約や家庭の事情で大学などへの進学を断念せざるを得ないケースもある。進学を支えていく制度の拡充が求められている。高校3年の次女を育てる南相馬市原町区の会社役員岡田義則さん(48)は「奨学金を借りやすく、返しやすい仕組みをつくり、教育費の負担を軽減させるべきだ」と訴える。
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土台となる初等教育や中等教育のレベルアップも急務だ。小学6年と中学3年が対象の2022(令和4)年度全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)で、福島県は小中を合わせた全6科目の平均正答率が全国を下回った。都道府県別で中学国語の32位が最高で、中学数学の43位が最低だった。
応用力が問われる問題の正答率が全科目で低く、県教委は自分の考えを伝えることが不得意と分析している。授業内容を暗記するだけでなく、なぜそうなるかを理解しなければ応用力は高まらない。
秋田県は2022年度、小学国語と小学理科、中学国語で全国1位。秋田県教委によると、子ども同士で課題を話し合いながら課題を解決していく「探究型授業」が、学力を底上げしている。
福島県教委は2022年度にスタートした第7次県総合教育計画で「小中学校の国語と算数・数学の正答率を2030年度までに全国平均以上とする」との目標を掲げる。話し合いや自分の意見を発表する授業を増やし、論理的な考察力を高める方針だ。子どもたち一人一人が主体的に学ぶ教育へと脱却できるかが問われる。