福島県県北地方には川俣シャモや果樹など県を代表する地域ブランドがある。そのブランド力をどう維持するかが課題だ。
福島市から南東に約20キロ離れた川俣町の山あいにある鶏舎。「出荷しても、ほとんど利益が出ない。ブランド存続の危機だ」。町が誇る地鶏・川俣シャモの生産を手がける斎藤正博さん(72)=川俣シャモファーム社長=は成鳥に餌を与えながら声を落とした。
コロナ禍による外食需要の低迷で打撃を受けた。町内13生産者による年間出荷数は約6万羽だったが、感染拡大で3割減の約4万羽まで落ち込んだ。
今年3月には農林水産省の地域ブランドを知的財産として保護する「地理的表示(GI)保護制度」に登録された。国のお墨付きを追い風に出荷拡大を目指していた矢先、ロシアのウクライナ侵攻や円安による飼料高騰に見舞われた。
斎藤さんによると、飼料1袋(20キロ)当たり2200円程度で、昨年に比べ約2割上昇している。出荷時期の前倒しや飼料の仕入れ先変更を検討するなどして急場をしのいでいるが、飼料価格は上昇し続け、自助努力も限界を迎えつつある。
生産者の苦境を受けて町は独自補助金を創設し、1羽当たり240円を支給している。県は7月、飼料1トン当たり300円を補助する臨時対策を打った。ただ、為替相場で円が続落する中、飼料高騰の天井は見えない。斎藤さんは養鶏を諦める生産者が出るのではないかと懸念する。「県は生産者の声に耳を傾け、実態に即した支援を講じてほしい」と訴えた。
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伊達市の東北中央自動車道「相馬福島道路」伊達桑折インターチェンジ近くでは、大型商業施設「イオンモール北福島(仮称)」の2024(令和6)年12月開業に向け、工事車両が頻繁に行き交う。
1995(平成7)年の計画浮上から27年を経て、事業が本格化した施設は年間1500万人の来客を見込む。市は新たな人の流れが生まれ、周辺の土地利用や新規店進出によって地域活性化につながると強調する。
地域住民の暮らしを支えてきた地元商店はイオンモールとの共存を目指すが、商店街の空洞化が加速するのではと不安視する声も漏れる。伊達市保原町の中央通り商店街で衣料品店を営む阿部真吾さん(44)は大型店進出が地域全体での誘客につながると肯定的に捉える一方、シャッターを下ろした店が増えた商店街を見つめ「どれだけの人が商店街まで足を延ばしてくれるだろうか」と不安は尽きない。
中小企業庁の2021年度の商店街実態調査によると、本県で商店街が「衰退している」と回答した割合は46・8%で全国平均を10・3ポイント上回った。
県は立地用件などを満たすことを求める県商業まちづくり推進条例で大型店の郊外出店を規制している。コロナ禍の対応として地元商店での消費を促すため、商店街など小規模店で使える電子商品券の発行事業を展開している。
阿部さんの店では、コロナ禍前の7割ほどの来客数にとどまる。阿部さんは消費喚起策を歓迎しつつ、中長期的な視点で商圏を形成する必要があると指摘。「大型店から商店街への人の流れを生む仕掛けを県や市などと一緒につくらなければならない」としている。