X メニュー
福島のニュース
国内外のニュース
スポーツ
特集連載
あぶくま抄・論説
気象・防災
エンタメ

国の周知、行き届かず 福島県の避難者、マイナンバーカード取得に苦労 被災自治体職員の負担増

2022.11.05 10:28

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故に伴う福島県の避難者のマイナンバーカード申請を巡り、全国各地の避難先自治体に避難者への対応が周知されず、スムーズに交付できないケースが出ている。避難先の自治体の担当者が住民票のある県内市町村に対応を問い合わせるなどして、交付まで時間がかかった事例などがあるという。国は交付率向上に躍起だが、本県特有の課題への対応が徹底されず、被災市町村の職員の負担が増している現状が浮き彫りになっている。

 浪江町住民課には昨年度、町民が避難している全国の市区町村の担当者から毎月20~30件の問い合わせが相次いだ。町民からのマイナンバーカードの申請に対して「どう対応したらよいか」などの質問が多く、町民からは避難先の自治体の窓口に申請に行ったが、「受け付けてもらえなかった」との声も寄せられているという。

 マイナンバーカードの交付申請は原則、本人確認のため申請か、受け取りのどちらかの際に、住民票のある自治体の窓口に行く必要がある。震災と原発事故の避難者は「特定の事情」として、避難先自治体を経由して交付申請でき、カードが郵送される仕組みになっている。

 全国市区町村の担当者が制度を知らなかったり、理解していなかったりしているのが原因とみられる。総務省自治行政局住民制度課マイナンバー制度支援室は「そのような声があることは承知している。引き続き、説明会等を開き、周知徹底していきたい」としている。

 双葉郡のある町村の担当者は「国は交付率の向上ばかり強調して、避難者への丁寧な対応がおろそかになっているのではないか。原発事故により古里から避難を余儀なくされた人々にスムーズに交付されるようにしてほしい」と求めている。


■浪江の受け取り未完了は1800件

 浪江町によると、10月16日現在、マイナンバーカードを申請したものの受け取りが完了していないものが約1800件あるという。このうち約千件が県外に避難している町民が申請し、受け取りに行きにくい状態となっているとみられる。


■交付率向上へ工夫 双葉郡各町村

 避難者を多く抱える双葉郡の各町村はマイナンバーカードの交付率向上に向けた取り組みを進めている。

 広野町は庁舎正面入り口の近くに、マイナンバーカード専用の窓口を設置した。町町民税務課の岡修一課長は「交付率向上のために、町が自発的に動く必要がある」と話す。川内村はワクチンの接種会場や保健施設など村民が集まりやすい場所に村職員が出向いて、申請を受け付けている。

 富岡町や葛尾村など6町村はマイナンバーカードにより、コンビニエンスストアで住民票などの証明書を受け取れるサービスを取り入れている。避難先で簡単に証明書を発行できる利点がある。

   ◇  ◇

 本県の交付率は9月末現在、43・9%で、全国の49・0%を下回っている。双葉郡の交付率は【表】の通り。 富岡町と葛尾村は住民の5割以上がマイナンバーカードを取得している。楢葉、浪江、川内各町村の交付率は県平均を下回っている。