東京電力福島第1原発事故に伴う福島県内の医師不足を解消するため設けられた福島医大の寄付講座「災害医療支援講座」は今年度、開設から10年を迎えた。県外から医師を招き、被災地医療の再生などに貢献してきたが、発災から11年8カ月余りが経過した災害医療の検証、若い世代への継承などが新たな課題となっている。
講座が招いた医師は初年度の2012(平成24)年度からの累計で常勤17人、非常勤12人の計29人。県内14の医療機関に派遣した。今年度は常勤6人、非常勤13人の計19人。設立当初から活動する医師もいる。
医師は診察に加え、被災者や医療従事者に与えた精神面の影響など地域の医療課題を研究し、国内外で発表してきた。講座の紺野慎一主任教授は「発災直後と比べ、災害の影響がどの程度回復したかなどを検証しなければならない」と新たな研究の必要性を挙げる。
今年度所属する医師19人の平均年齢は55・4歳。若い人材をいかに呼び込むかも課題となる。講座として、県などと連携しながら医師が働きやすく定着できる環境整備を進める方針。
団体や個人からの寄付金で成り立つ研究費の確保も重要だ。福島医大によると、これまでに23の企業・団体・病院・個人から合わせて約6900万円の寄付が寄せられ、残金は約1300万円。研究費には年間500万円前後が必要なため一時は残金が1千万円を切ったが、増加した。ただ、講座の設置期間は2025(令和7)年度までで今後、費用が枯渇する恐れがある。
紺野主任教授は「多くの協力に感謝したい。医師不足は県全体の課題で、講座は地域医療のモデルになり得る」と講座の意義を語る。
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講座への寄付金は1口10万円から受け付けている。問い合わせは福島医大企画財務課(地域医療支援センター)へ。
【災害医療支援講座が医師を派遣している県内の医療機関(2022年度)】※かっこ内は所在市町
いわき市医療センター、松村総合病院、福島労災病院(いわき)相馬中央病院(相馬)南相馬市立総合病院小高診療所、大町病院、志賀医院、ほりメンタルクリニック(南相馬)北福島医療センター(伊達)高野病院(広野)県立ふたば医療センター付属病院(富岡)