政府主催の国際女性会議2022(WAW!)は3日、福島、北海道、青森などをオンラインでつなぎ東京都で開催された。福島県福島市のクリフ社長の石山純恵さん(60)、同県伊達市の仁泉会統括看護部長の平野典子さん(61)らが参加。地方で女性が活躍するために女性間の連携強化の必要性などを国に提言した。国は本県を含めた地方の実情を踏まえ、政策決定の指針とする。
石山さんは、地方の企業に女性管理職が少ない課題を示し、若手社員の手本となる人材が必要だと訴えた。「女性同士で支え合い、新たな時代のモデルをつくろう」と提案した。尾身朝子総務副大臣は、地方で活躍する女性をモデルにし、組織や地域の枠を越えて他の地域に発信する考えを示唆した。
平野さんは、専門看護師などの資格を持つ女性が活躍できる場が地方に不足していると強調した。結婚や出産、子育てをしながら柔軟に働くことができる制度の設計を国に求めた。
他の出席者からも地方で多くの女性が孤立している実情を訴える声が上がった。子育てや介護などに励む女性への税制優遇、女性経営者の選択的夫婦別姓の在り方の再考などについて国に求めた。
こうした現状の中、地方から首都圏に女性が転出する傾向にある。尾身氏は地域おこし協力隊の隊員が地方で活動し、定住などにつながっていると紹介。「隊員を受け入れる自治体を増やしていきたい」と取り組みを強化する考えを示した。
女性の政治参加もテーマとなった。全国の約1700市区町村で女性の首長は39人にとどまり、県内59市町村にも女性首長はいない。青森県外ケ浜町の山崎結子町長は町管理職員、町議ともに女性がいないと説明し、女性の立場で何か意見を言っても少数派だと言われることが多いという実情を明かした。
国際女性会議2022では、本県からの参加者が東日本大震災、東京電力福島第1原発事故からの復興への歩みを通して得られた経験などを世界に発信し、「どこでも安心して住み続けられることが防災において重要になる」などと意見を述べた。海外の参加者からは「福島の教訓を世界に伝えていくことが大切だ」との声が上がった。
「女性と防災」の分科会には、クリフ社長の石山さん、福島市の桜の聖母短大学生会長の岡部真林さん(20)、県国際女性教育振興会相談役の鈴木二三子さん(77)=西会津町=が登壇した。石山さんは震災後の避難所でのプライバシー確保やコミュニティー維持の難しさを指摘。「普段からジェンダー(社会的性差)について話し合うことが重要」と訴えた。女性の役割について「生活の質や暮らしの向上により力を発揮できる」との認識を示した。
岡部さんは小学2年の時に震災を経験した。ある男性から「福島の女の人はお嫁に行けないね」と言われた体験談を披露。その上で「『防災』とは『災いを防ぐ』こと。偏見は災いであり、若い女性への偏見を無くすことが防災になる」との考えを述べ、「大好きな福島をより良い場所にしたい」と誓った。
県国際女性教育振興会は震災の体験談をまとめた同会の冊子を会場で配布した。鈴木さんは「災害時、女性がどのような思いをし、何に困っているかを知ってもらいたい」と訴えた。オンラインで参加したセネガルのアワ・マリー・コル・セック大統領付国務大臣は「被災経験を記録に残すことは有意義な取り組み。アフリカでも実践できる」と述べた。
会場では県内の女性の企業経営者らが聴講した。西郷村の東陽電気工事の石川格子社長は「福島に関わる問題について深い議論があり、参加して良かった」と感想を述べた。