東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の発生から12年になるのを前に、渡辺博道復興相は19日までに福島民報社など報道各社のインタビューに答えた。福島県浪江町を本拠地として4月1日に設立する福島国際研究教育機構(F―REI、エフレイ)と地元の連携を積極的に進める考えを示し、「市町村ごとの座談会を開催し、地域のニーズやシーズ(技術の種)、期待を丁寧に把握していく」と強調した。
座談会は、機構が地元の抱える課題をはじめ、企業などの持つ技術やノウハウを把握し、産業化に向けた連携の具体化につなげる狙いがある。当面は浜通り13市町村と、原発事故に伴い避難区域が設定された田村市と川俣町を加えた計15市町村で開催する予定。初代理事長となる山崎光悦氏ら機構首脳部が各市町村に出向き、事業者や若者らとの車座対話で意見を聞く他、地元企業などの視察も計画している。6月から来年3月までに15市町村を一巡する考えだ。
渡辺復興相はインタビューで「地域との連携は非常に大事だ。地域の声を反映できるような仕組みができればいいと思っている。地域とのつながりを密接にしていきたい」と述べた。
福島復興再生特別措置法には、福島国際研究教育機構の事業に地元の意見を反映させるため新産業創出等研究開発協議会の組織化が明記されている。機構や県、15市町村、県内の大学や高専などで構成し、5月上旬に設立する予定。協議会には研究開発と広域連携の二つのワーキンググループが設置される。
■希望者全員の帰還実現へ、きめ細かく住民意向調査 渡辺復興相インタビュー
東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から12年になるのを前に福島民報社など報道各社のインタビューに答えた渡辺博道復興相は、帰還困難区域の特定復興再生拠点区域(復興拠点)から外れた地域で希望者全員の帰還を実現するため、住民の意向調査をきめ細かく実施する姿勢を示した。
―復興拠点外の避難指示解除の具体化に向け、政府は福島復興再生特別措置法改正案を今国会に提出した。
「特定復興再生拠点区域外に帰還する住民の生活再建を目指すため、特定帰還居住区域を創設する。住民が安全、安心して日常生活を営めるように宅地、道路、集会所、墓地などを区域に含めた上で、除染や環境整備に取り組む。復興庁は被災者に寄り添いながら、復興の司令塔としての機能を果たし、復興をさらに加速させる」
―特定帰還居住区域の内外で住民の分断が生じるのではないかとの懸念がある。
「2020年代をかけて帰還意向のある住民全員が帰還できるように意向調査を複数回実施する。帰還意向の有無のみを問うのではなく、判断に悩む住民に寄り添うため、保留という項目を設けている。自由記載の項目もあり、きめ細かく、丁寧に帰還意向を伺っていきたい」
―住民からは除染や土地・家屋の荒廃対策を求める声も相次いでいる。
「残された土地・家屋の扱いは、引き続き重要な課題だ。地元自治体と協議を重ね、将来的に帰還困難区域全てを避難指示解除する。復興再生に責任を持って取り組む」
―福島第1原発の処理水の海洋放出が春から夏ごろに予定されているが、国内外の理解が十分に進んでいない。理解醸成や風評抑止対策をどのように強化するのか。
「復興庁としては新聞やインターネット、ラジオなどのさまざまな媒体の活用に加え、海外の新聞、雑誌への記事掲載などでも発信している。地元産品や観光名所という地域の魅力を発信するイベントなど、福島の各自治体による風評払拭に向けた取り組みの支援を強化する。政府一丸となり、決して風評影響を生じさせないという強い決意の下、科学的根拠に基づいた情報発信などの風評対策に引き続き取り組む」
―第2期復興・創生期間終了後となる2026(令和8)年度以降の復興財源をどのように確保するのか。
「原子力災害被災地域では本格的な復興再生に向け、今後も中長期的な対応が必要だと認識している。被災自治体の要望を踏まえ、新たな課題やニーズにきめ細かく対応する。昨年閣議決定された政府税制改正大綱に、息の長い取り組みを支援できるように確実に復興財源を確保することについて盛り込まれた。予算の執行状況や事業の進捗状況などを注視しながら、必要な復興事業の実施に支障をきたさないよう万全を期す」