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しょうゆで港町振興 福島、宮城の7蔵元連携 魚に合う商品開発 3月11日発売

2023.02.24 09:05
漁業と観光の復興に寄り添うと決意する渡辺さん

 東日本大震災で被災した福島、宮城両県のしょうゆ醸造の7蔵元が連携し、販路拡大などを図る「港町のしょうゆ屋」プロジェクトが始動した。第1弾となる商品が完成し、震災から12年となる3月11日に販売が始まる。港町にある立地を生かし、蔵ごとに魚に合う商品を造った。東京電力福島第1原発事故に伴う風評の影響が残る中、関係者は「県境を超えて魚文化を盛り上げたい」と誓う。

 プロジェクトは震災や原発事故による事業所の廃業やコロナ禍の影響でしょうゆの消費が落ち込んでいる現状を受け、宮城学院女子大現代ビジネス学部の石原慎士教授が沿岸部の蔵元に賛同を呼び掛け。7蔵元と仙台市の宮城学院女子大の産学連携事業として2022(令和4)年度に本格的に動き出した。

 第1弾では、それぞれの蔵元が、地元漁協で水揚げの多い魚種に合うしょうゆを仕上げた。瓶のデザインやラベルなどに統一感を持たせ、県内や宮城県の店舗に7種類を並べて販売する。第2弾の企画に向けて情報共有を進めるとともに、醸造技術の向上に取り組んでいく。

 石原教授は「両県とも魚種が豊富で各蔵は昔から地元食材に合うしょうゆを造ってきた。県境を越え一体的に取り組むことで地域活性化につながってほしい」と願う。宮城県石巻市の山形屋商店社長の山形政大さん(51)は「連携の輪を福島県の他社や岩手、青森の蔵元にも広げたい」と意気込んでいる。

 商品発表会は24日に宮城学院女子大で開かれる。

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 相馬市の山形屋商店代表社員の渡辺和夫さん(53)は、プロジェクトの代表を務める。「地域の漁業や観光に寄り添い、震災を風化させずに復興を支えていきたい」と誓う。

 昨年10月の全国醤油品評会で最高賞の農林水産大臣賞を受賞した同社は「『ヒラメ』に合う うまさを引き出すしょうゆ」を販売する。火入れの技術が生み出した色つや、食欲をそそる香りに加え、まろやかな甘味とうま味のバランスが白身魚の味を引き立てる。

 全国品評会で最高賞に輝いた5点のうち、本県と宮城県の醤油が4点を占めた。渡辺さんは「業界の常識だけでは県境を越えた連携という画期的な発想は生まれなかった。県外の蔵元と醸造技術や情報を共有して刺激し合えば、それぞれの品質をさらに高められるはず」と目を輝かせた。