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G7がIAEA評価支持 共同声明に盛り込む 原発事故処理水 風評対策、担保されず

2023.04.18 09:19

 先進7カ国(G7)は15、16の両日に札幌市で開いた気候・エネルギー・環境相会合で共同声明をまとめ、東京電力福島第1原発の処理水について、安全性確保に向けた国際原子力機関(IAEA)のレビュー(評価)を支持するとの文言を盛り込んだ。政府は今年春から夏ごろにかけて処理水の放出を始める方針で、G7の支持を風評抑止のための国際的な理解醸成の足掛かりにしたい考えだ。ただ、県内の漁業関係者らは放出に反対しており、理解醸成と風評払拭の具体策を求めている。


 G7は、福島第1原発の廃炉と福島の復興に処理水の放出は不可欠と指摘。第三者機関のIAEAによるレビューはIAEAの安全基準や国際法との整合性を保ち、人体や環境に害を及ぼさないことを確保するのにつながるとして支持した。福島第1原発の廃炉の進展と、科学的根拠に基づく日本のIAEAと連携した透明性ある取り組みも歓迎すると表明した。

 G7は、日本がIAEAの専門家グループと連携して進める除染土の再生利用と最終処分の課題を議論するための取り組みや、被災地の環境再生が一歩ずつ進んでいることにも言及した。日本は国際社会と緊密なコミュニケーションを取りながら取り組んでいると評価した。

 政府は処理水の海洋放出に伴う新たな風評を抑止するため、国内だけでなく国際社会の理解醸成が不可欠として科学的根拠に基づく情報発信に努めるとしている。経済産業省の担当者は処理水の安全性確保について、「歓迎」よりも肯定的な意味を持つ「支持」を得られたことを成果に挙げた。G7の閣僚会合は全世界が注目しており、G7以外の各国の理解を得るための重要な布石になるとみている。今後、国際会議や2国間協議などでも働きかけを強めていく方針。

 G7は処理水の安全性確保に向けたIAEAのレビューを支持するとし、政府は国際理解の醸成に大きな成果と受け止めたが、国内外への情報発信や風評対策が担保されたわけではない。処理水の放出に韓国や中国、ロシアが反発する中、共同文書は一定程度のアピールになるとみられるが、具体的な取り組みは不透明なままだ。

 県原子力安全対策課の担当者は「共同声明がどのようなやりとりで決まったのか分からないので言及できない」とした上で、「県としては、引き続き国に正確な情報発信と理解醸成の取り組みを求めていく」と語った。

 県内の漁業関係者は情報発信の不十分さを指摘する。いわき市漁協の江川章組合長は「処理水の安全性をきちんと説明し、納得してもらう必要がある。まだまだ不安がいっぱいだ」と語気を強めた。


■G7気候・エネルギー環境相会合共同声明の処理水関係部分

【福島第1原発の事故対応】

 国際原子力機関(IAEA)が過去数年以上にわたって福島第1原発の状況に関する進捗(しんちょく)について報告していることに留意し、我々は、同原発の廃炉作業の着実な進展とともに、科学的根拠に基づきIAEAとともに行われている日本の透明性のある取り組みを歓迎する。

 我々は、同原発の廃炉および福島の復興に不可欠である多核種除去システム(ALPS)処理水の放出が、IAEA安全基準および国際法に整合的に実施され、人体や環境にいかなる害も及ぼさないことを確保するためのIAEAによる独立したレビューを支持する。

 我々は、また、日本がIAEAの専門家グループと連携し、除去土壌の再生利用と最終処分の課題を議論するために取り組んでおり、東京電力福島第1原発の敷地外における被災地の環境再生が一歩一歩進んでいることを認識する。

 我々は、オープンで透明性をもって、国際社会との緊密なコミュニケーションを取りながら進められているこれらの取り組みを継続するよう、日本に奨励する。