東京電力福島第1原発事故の国の賠償基準「中間指針」見直しを受けた追加賠償を巡り、対象となる福島県民が申請に手間取り、東電の相談窓口に問い合わせが殺到している。10日のウェブ請求受け付け開始以降、23日までに手続きを終えた人は対象者約148万人の1割に当たる約14万人。申請には本人確認のため、過去の請求で用いた振込先口座などの情報が要るが、年月の経過でお思い出せないケースが続出している。必要な情報は東電に照会すれば確認できるが、相談電話はつながりにくくなっている。
「請求手続きの仕方が分からない」「請求に期限はあるのか」。東電が追加賠償に対応するため設けたフリーダイヤルの電話相談には連日、対象者からの問い合わせが絶えない。一日に千件を超えた日もある。郡山市の50代男性は「受け付け開始から2週間、毎日数十分間は電話をかけているが全くつながらない」と憤る。東電は電話回線や応対する担当者を順次増やしているが、混雑の緩和には至っていないのが実情だ。
東電が福島、郡山、いわきなど県内8市町の11カ所に設けている相談窓口にも申請開始前の10~20倍の人が訪れる。各地の開設日を増やすなどしているが、行列ができるなど混み合う状況が続いている。
今回から導入されたウェブ請求で求められる「本人認証のための情報」が確認できないケースが相次いでいるのが背景にある。申請には前回提出した請求者の名前や電話番号、住所、振込先の番号口座が必要だ。口座番号などを確認できずにウェブ申請でつまづいた人が電話で問い合わせている。スマートフォンなどの扱いに不慣れな高齢者が多いという。白河市の70代男性は「一日も早く支払いを受けたいのに、混雑の解消を待つしかない。手続きの周知が不十分だ」と東電の対応に不満を抱く。
東電は今後、未請求の対象者には5月下旬以降にダイレクトメールを送る。資料が届けば郵送でも手続きが可能になる。ただ、対象者の中には複数回の転居を繰り返した避難者など、現在の所在を把握し切れないきない人もいる可能性がある。東電は県や市町村と協力して対象者の現住所を確認するとともに、交流サイト(SNS)などを使った広報に力を入れる。
請求を巡る問い合わせが県にも連日寄せられる事態を受け、県は東電に相談対応の態勢強化を申し入れている。原子力損害対策課は「手続きが円滑に進むよう改善を促すとともに、迅速かつ確実な賠償の徹底を求めていく」としている。
申請手続きの現状について東電の担当者は混雑は一時的な現象との認識を示した上で「心配や不安をおかけしないため、請求に期限がないことをしっかり周知していく。相談対応を改善して対象者一人一人に確実に賠償を進める」と話した。
■メール通して住所変更受け付け 25~30日に東電
東電は賠償請求手続きの改善策として、前回請求時から住所が変わった対象者については25日から30日まで、電子メールでも郵送先の住所変更を受け付ける。東電が24日、発表した。
これまでは前回請求時の申し込み番号などを忘れた場合、電話で申請するしかなかった。25日から6日間、東電の賠償ウェブサイト内に開設のメールフォームに必要事項を記入すると、住所が変更できる。裁判外紛争解決手続き(ADR)で既に賠償支払いを受けているが、受け取り額と追加賠償の基準額に差が生じている人もウェブで申請可能とする。
メールフォームを通した住所変更の申請は25日午後1時から、ADR利用者の賠償申請は25日午後11時から、賠償ウェブサイトで手続きができる。