福島県いわき市の渡辺充彦さん(37)は東日本大震災と東京電力福島第1原発事故で被害を受けた古里に笑顔を増やそうと、会社を辞めて就農し、市内平藤間に「ブルーベリーファームいわき」を開いた。来年春には観光農園化し一般客を迎える。栽培の機械化を進め、カフェも併設して農業の新しい形を示したい考えだ。「新規就農者が増えるきっかけになればうれしい」と意欲を見せる。
会社員だった25歳の時、市内で被災した。生まれ育った地域の活気が失われ、なんとかしたいと思った。「人が元気になれる場所をつくろう」と起業を志し、趣味のサーフィンを生かして「サーフカフェ」の開店を思い立った。2016(平成28)年に勤務先を辞め、サーフィンが盛んな神奈川県茅ケ崎市に移住。飲食店で経営のノウハウを学んだ。しかし、2019年の台風19号とその後の新型コロナウイルスの感染拡大で、開業どころではなくなってしまった。
絶望感を抱く中、愛知県でブルーベリーの観光農園を営む人の本を読んだ。工夫次第で農業がビジネスになると知った。実家が農家だったこともあり、農業をなりわいにしようと決めた。
神奈川県内の観光ブルーベリー園で研修を積むなどして昨年4月、いわき市内に借りた農地に鉢を並べ、16品種1200本のブルーベリーを植えた。水や肥料を自動でまく機械も導入した。カフェは海の家をイメージした建物にする計画で今後、整備する。渡辺さんは、大勢がブルーベリーの摘み取りを楽しみ、交流する場になればと夢を描く。「いわきを訪れる人を増やしたい」と意気込む。
13、14の両日、ブルーベリーの観察会を農園で催す。物販やワークショップを繰り広げる。詳細はインスタグラムのアカウント(bbfi678)へ。