西郷村の観光施設「キョロロン村」と温泉施設「ちゃぽランド西郷」は2020(令和2)年の事業停止から3年を迎えた。村は現在、土地取得に向けて国と交渉を続けている。地域振興に向けた積年の懸案であり、再生に向けて早期に方向性を示すよう求めたい。
キョロロン村は1989(平成元)年、ちゃぽランドは1994(平成6)年に開業した。キョロロン村の利用者は1992年度の約14万7千人をピークに、2019年度は2万人に低迷した。ちゃぽランドは甲子トンネル開通直後の2009年度に9万1千人が利用したが、2019年度は6万5千人と減少した。新型コロナウイルスが追い打ちをかけ、2020年5月、指定管理者の西郷観光が事業継続を断念し解散した。
村が土地取得を決めた背景には旧白河高原スキー場の苦い教訓がある。赤面山山ろくに広がるスキー場は2000年に営業を停止し、20年以上放置されたままだ。建物は廃虚となり、不法投棄の現場ともなった。村幹部や関係者に「二の舞だけは避けたい」との思いがあった。
両施設について、村は2020年8月から林野庁と国有地取得の交渉を進めている。大まかな方針では一致し、現在は諸条件を詰めている段階という。取得後の活用策もその一つ。村はさまざまな可能性を探っており、その一環として2022年度、民間事業者から意見や提案を求める「サウンディング型市場調査」を実施した。関心を持つ事業者が参加し、遊休施設の資産活用や継続の可能性を検討した。
新甲子温泉周辺で合宿誘致が進められてきた経緯もあり、公共性の高い森林公園も将来像の一つとされる。
人流や物流が回復しつつある今、交渉時間は無制限ではないと、当事者は意識すべきだ。さらに、この地域が広域観光振興にとって、地理的に重要な位置にあることも再認識する必要がある。国道289号沿いで会津と中通りの接点に位置し、栃木県那須地域とも接する。この地の再生が広範囲にプラスに作用していく可能性は大きい。那須白河会津観光推進協議会と新白河広域観光連盟の構成員として、西郷村の積極的な姿勢に期待したい。(広瀬昌和)