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「漁業続けていく」 全漁連会長、首相に対策要求 処理水24日にも放出

2023.08.22 10:06

 東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出を巡り、岸田文雄首相と21日に面会した全国漁業協同組合連合会(全漁連)の坂本雅信会長。理解を求める国のトップに対し「反対であることは、いささかも変わりはない」との姿勢を貫き、今後数十年の漁業の行方を左右しかねない放出への強い懸念とやり場のない不安をぶつけた。反対をよそに政府は22日、関係閣僚会議で放出開始日を決める。

 「われわれの願いは漁業を続けていくという、その一点だ」。坂本会長は官邸の一室で、テーブル越しに正面に座る首相をまっすぐに見つめ、表情を崩さずに全国の漁業者の心情を静かに代弁した。

 「(処理水の)最後の一滴の放出を見極めるまで漁業者の受け止めは予断を許さない」との言葉で、後継者を含めて数十年にわたって不安を抱えながら漁業に臨むことになる漁業者の厳しい状況を訴えた。同席した全漁連の幹部、県漁連の鈴木哲二専務らも鋭い視線を首相に向け続けた。

 対峙(たいじ)した首相と松野博一官房長官、西村康稔経済産業相は坂本会長の言葉に時折、大きくうなずきながら、漁業者の切実な思いをかみしめるように聞き入った。冒頭を除いて非公開で行われた話し合いは当初予定された15分間の倍、約30分に及んだ。

 政府、東電は「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」と県漁連と約束している。面会後、坂本会長は記者団から関係者の「理解」の程度を問われると「仮に(処理水の)放出が行われ、最終的な廃炉の段階で漁業が継続できて初めて100%の理解が生まれると思う」と述べた。処理水に関する科学的な安全性の理解は進んだ一方、廃炉の完遂まで真の安心は得られないとの苦しみを吐露した。

 国際原子力機関(IAEA)の包括報告書などで科学的安全性の理解は進んでいるが、「(処理水が)放出された場合にモニタリングの中で証明されていくものだ」とし、安全性の担保には計画の確実な実施が必要だとの考えを示した。

 処理水の処分は、福島の復興や福島第1原発の廃炉に向けた道のりの通過点ということも頭では理解している。その上で、国の全責任で必要な対策を講じ続けることを強く求めた。