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福島県沖底引き網漁解禁 魚介取引額は昨年並み 処理水放出、関係者「推移見守る」

2023.09.02 09:16
底引き網漁の解禁日を迎え、多彩な魚種が水揚げされて活気づく競り=1日午後0時50分ごろ、相馬市・相馬原釜地方卸売市場

 東京電力福島第1原発の処理水海洋放出が行われている中、福島県沖での底引き網漁が1日、2カ月間の休漁を経て解禁された。放出による風評が懸念される中、初日の市場での取引額は昨年並みで大きな変動はなかった。底引き網漁は主力漁法の一つで、今後「常磐もの」の流通量は増える見込み。漁業関係者は漁業再生に向けて水揚げ量増を目指す。

 福島県沖での底引き網漁は資源保護のため7、8月は禁漁期間だった。県漁連所属の底引き網漁船は49隻。1日未明、福島県相馬市の松川浦漁港からは相馬双葉漁協の20隻が出漁した。同漁協の水揚げ量は計19・8トンで、昨年を約5トン上回った。

 相双漁協によると、主な魚種の1キロ当たりの取引価格はマサバが40~41円(昨年同日30~58円)、ミギガレイが20~359円(同20~366円)、ヤナギダコが50~800円(同101~769円)。担当者は「サイズや海水温上昇に伴う鮮度の変化で価格は変動するが、昨年とほぼ変わらない。処理水放出の影響が見られず、ほっとした」と胸をなで下ろした。

 一方、オキナマコは300~750円となり、昨年の500~1600円から大幅に値を下げた。漁協は、中国が日本産水産物の輸入を全面停止し、需要が減ったのが要因としている。

 いわき市漁協の漁船が初日に水揚げした量は前年比で約1・4トン増の計6・7トン。常磐ものの代表格ヒラメの価格は平均886円で、昨年から約300円上昇した。全魚種の平均価格は478円で、昨年の470円とほぼ同じだった。

 福島県沿岸漁業は試験操業を2021(令和3)年3月末に終え、本格操業への移行期間にある。底引き網漁は2022年の水揚げ量5604トンのうち半数超を占める。いわき市漁協は水揚げ量を2028年までに震災前の50%、相双漁協も同年までに70%に回復させる目標を掲げている。

 漁業関係者の間では風評の発生が懸念されている。県水産市場連合会の遠藤一弥会長(郡山水産社長)は放射性物質トリチウムの検査対象魚種の拡大を望む。「海藻類や貝類も対象とし、国は安全性を分かりやすく伝えてほしい」と強調。いわき市の水産物卸売業いわき魚類の鈴木健寿社長は「今は売り手と買い手が直接取引する場合が多い。競りの市場価格で(処理水の影響を)判断するのは難しく、長期的に価格の推移を見守りたい」と述べた。

 県が魚介類の放射性セシウムを検査している他、各漁協も水揚げした全魚種を自主検査している。自主検査の基準値は1キロ当たり50ベクレルで、食品衛生法に基づく国の基準値(同100ベクレル)よりも厳しい値だ。

 海洋放出後の魚介類のトリチウム濃度は水産庁が検査し、ホームページで公表している。放出が始まった8月24日以降、福島県沖で採取した魚は全て検出限界値未満になっている。