「三陸・常磐もの」をはじめ、東京電力福島第1原発からの処理水放出の影響が懸念される海産物への支援を表明していた日本商工会議所(日商)は21日、消費拡大に向けた後押しを始めた。東京都内で開いた総会の懇親会で県産魚介類を用いた料理を提供。出席者の「福島の魚を会合やイベントに使う」「風評被害の大変さは理解している」との支持や共感の声に、県内の関係者は力を得た。各商工会議所にも具体的な支援を模索する動きが広がる。
懇親会は帝国ホテルで開かれ、和食店「吉兆」が料理した県産のサバと茨城県産シラスの丼物、江戸前寿司の「なか田」が握った県産のイカ、アジ、ヒラメなどのすしを並べた。全国から集った経済人が味や品質を再認識しながら舌鼓を打った。
相馬商工会議所の草野清貴会頭、いわき商工会議所の小林裕明専務理事、福島商工会議所の安達和久専務理事らが県外の出席者に積極的に県産水産物を売り込んだ。勧めを受け、サバを口にした東京商工会議所の田川博己副会頭(JTB相談役)は「福島の海産物はとてもおいしい。風評が起きないよう、イベントなどで来場者に消費を働きかける」と語った。草野会頭は「福島の魚が好意的に受け止められてうれしい。ブランド化を進める相馬の天然トラフグが全国的な産地となるよう取り組む」と言葉に力を込めた。
県産水産物の消費拡大を応援する声が相次いだ。大田原商工会議所(栃木県大田原市)の岡野繁雄副会頭は「栃木県も原発事故の直後は多くの農家が風評に苦しんだ。福島の大変さはよく理解している。今までもこれからも、隣県として応援する」と心を寄せた。
作曲家古関裕而さんがモデルのNHK連続テレビ小説「エール」を機に、福島市とパートナーシティ協定を結ぶ愛知県豊橋市の小林和夫豊橋商工会議所専務理事は「福島の海産物を豊橋でも販売したい。新鮮なまま、おいしく運ぶ方法を考える」と支援を約束した。
総会には428商工会議所から約千人が出席した。日商の小林健会頭(三菱商事相談役)はあいさつで海洋放出の影響が懸念される事業者の支援策「水産物販路開拓・拡大応援パッケージ」を急ぎまとめ、展示会や商談会などを各会議所と連携して展開する考えを表明。風評被害や周辺国の輸入規制の撤廃に向けて「販路の開拓支援を行っていく必要がある」と強調した。
具体的な支援を進める商工会議所もある。東京商工会議所は10月11、12の両日、会議所内の展示スペースで常磐ものの販売会を開く。本県のアンテナショップ「日本橋ふくしま館MIDETTE(ミデッテ)」の商品も取り扱う。
県商工会会議所連合会の渡辺博美会長(福島商工会議所会頭)は「商工会議所の強みはスピード感と行動力だ。日商の呼びかけは心強い」と感謝した上で「県内の会議所間のつながりを強め、風評対策に努める」と前を向いた。