東京電力福島第1原発事故に伴う帰還困難区域だった地域に残されていたピアノを再生させる取り組みが進んでいる。福島県いわき市のピアノ調律師遠藤洋さん(64)が、同県内の津島小(浪江町)と双葉中(双葉町)にあった計2台を修復している。ピアニストの西村由紀江さんが21日、浪江町津島地区で津島小のピアノを奏で、復活の音色を届ける。津島小のピアノには浪江の児童が絵を描き、6日に子どもたちが作業に励んだ。
被災地のピアノを再生し町民に勇気や元気を与えようと、西村さんが福島相双復興推進機構に取り組みを提案した。機構が遠藤さんに修理を依頼。遠藤さんが立ち会い、避難指示が解除された特定復興再生拠点区域(復興拠点)内の津島小、双葉中のピアノが8月に搬出された。約12年間手つかずで劣化しており、すべての弦を交換した。
津島小のピアノは、町の将来を担う子どもたちの思いを取り入れるため、絵を描いてもらおうと決めた。なみえ創成小・中で3年生と5年生計18人が絵の具を使い「浪江の未来をテーマ」に花や海などを描いた。美術作品などを製作する東京都のアトリエヤマダが協力した。5年生の松村花音さん(11)はコスモスや動物の絵を描いた。「花いっぱいの町になればと願いを込めた。多くの人にピアノを見てほしい」と話した。
遠藤さんは子どもたちの姿を見つめ、「眠っていたピアノを見たとき、さみしがっているように感じた。子どもたちの前向きな気持ちが入り、ピアノも喜んでいる」と感慨に浸った。今後、音色の調整などを進める。「明るい音にする。ピアノが津島の復興のシンボルになると信じている」と未来を見据えた。
西村さんの演奏は21日に津島中校庭で開かれる標葉祭りで行われる。演奏後は、町つしま活性化センターに置かれ、住民らが自由に演奏できるようにする。双葉中のピアノは11月、双葉町で西村さんが奏でる。 #東電福島第一原発事故