福島民報社は県議選の無投票当選者17人を含めた立候補者71人に実施したアンケートで、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興に向け、最も優先して取り組むべき課題を聞いた。「第2期復興・創生期間以降における財源・制度の確保」が40人で最多となり、全候補者の約6割に上った。この他「風評払拭・風化防止対策の強化」「避難地域の復興・再生」「原発の着実な廃炉」「福島イノベーション・コースト構想の推進」もそれぞれ30人を超え、復興に向けた課題が山積している現状が浮き彫りとなった。
アンケート結果のURLは https://www.minpo.jp/pub/rikkouhou_enquete2023 。
今回のアンケートに回答を寄せた立候補者71人の党派別内訳は自民31人、立憲民主13人、共産6人、公明4人、維新1人、諸派1人、無所属15人。
復興に向け、最も優先して取り組むべきと考える課題を8項目から三つ選ぶよう求めた。回答結果は【グラフ】の通り。
「第2期復興・創生期間以降における財源・制度の確保」を選んだ40人を党派別に見ると、自民24人、立民7人、公明3人、無所属6人。この他の回答は「風評払拭・風化防止対策の強化」が36人、「避難地域の復興・再生」と「原発の着実な廃炉」が各32人、「福島イノベーション・コースト構想の推進」は31人などとなり、いずれも党派を超え、多くの立候補者が選択した。
「その他」の自由記述では「ハードとソフトの両面での比類なき『福島強靱化(きょうじんか)』」(60代男性候補)、「F―REI(福島国際研究教育機構、エフレイ)など3・11後の取り組みを県内の地域経済に波及させるための取り組み」(40代男性候補)などが挙がった。
政府の手厚い支援がある第2期復興・創生期間は2021(令和3)年度に始まり、新県議の任期中の2025年度で終了する。復興財源の規模は5年間で約1兆6千億円。政府は昨年12月に閣議決定した税制改正大綱に「息の長い取り組みを支援できるよう確実に復興財源を確保する」と明記したが、「第2期」終了後の具体的な予算規模や確保の手段は示していない。
アンケートでは多くの立候補者が「第2期」以降を含めた中長期的な財源と制度の担保を重要視していた。県も2026年度以降の復興財源確保を重点事項に掲げ、政府の来年度予算編成に合わせ中央省庁との交渉を本格化させている。7日には内堀雅雄知事が上京し、関係省庁に緊急要望する。
■除染廃棄物の県外最終処分「国の指導力」重視7割
原発事故に伴う除染で出た除去土壌などの県外最終処分に向け、特に重視する点も複数回答で尋ねた。「国のリーダーシップ」が52人で最も多く、全候補者の7割を超えた。法律に明記された2045年までの県外最終処分の完遂に向け、国の指導力を求めている状況が鮮明となった。52人の党派別内訳は自民25人、立民8人、公明4人、維新1人、諸派1人、無所属13人だった。
回答結果は【グラフ】の通り。「国のリーダーシップ」に次いで、「科学的安全性の理解醸成」が47人、「新たな減容化・再生利用技術の開発」が37人などと続いた。
環境省は9月末、県外最終処分に向けた本格的な検討を開始した。最終処分場の構造や規模について2024(令和6)年度内に複数案を取りまとめるとしている。同省は最終処分する総量を減らすため、除染土壌の再生利用を進める考えだが、県外での再生利用計画では周辺住民が反対するなど理解醸成が進んでおらず、課題は多い。
■「人口減少対策」最多 復興関連除く喫緊の県政課題
県議選の立候補者71人に福島民報社が実施したアンケートでは、復興関連を除き喫緊と考える県政課題も複数回答で聞いた。最多となる41人が「人口減少対策」と回答した。全立候補者に人口減少対策として特に優先すべき政策を複数回答で尋ねると、「結婚・出産・子育ての希望をかなえる環境づくり」が57人で最も多かった。
今回のアンケートに回答を寄せた立候補者71人の党派別内訳は自民31人、立憲民主13人、共産6人、公明4人、維新1人、諸派1人、無所属15人。
県政課題は13項目から三つ選んでもらった。「人口減少対策」を選んだのは自民20人、立民11人、共産1人、無所属9人。「経済・雇用・物価高対策」が36人、「子ども・子育て支援」が32人、「防災減災対策」が21人と続いた。
「その他」の自由記述では「競争力の高い産業基盤の確立」(50代男性候補)、「安全・安心の防犯対策」(60代男性候補)などが挙がった。
人口減少対策として優先すべき政策で「結婚・出産・子育ての希望をかなえる環境づくり」を選んだのは自民24人、立民12人、共産3人、公明4人、維新1人、諸派1人、無所属12人。この他は「雇用環境の充実」が40人、「教育の充実」が32人などとなった。
■「賃上げ」優先65人 原油高・物価高対策
影響が長期化している原油高・物価高対策として特に優先すべき政策を複数回答で尋ねたところ、「賃上げ」が65人で最多となり、全候補者の約9割に上った。
「賃上げ」を選んだ65人を党派別に見ると、自民26人、立民13人、共産6人、公明4人、維新1人、諸派1人、無所属14人だった。
「減税」が38人、「低所得者等への給付金」が36人と続いた。
■知事の県政運営 8割「評価する」
3期目に入った内堀雅雄知事の県政運営の評価については、全体の約8割に当たる58人が「高く評価する」または「評価する」と答えた。
内堀県政への評価に関する回答は【グラフ】の通り。「評価する」が32人で最も多かった。「高く評価する」が26人、「全く評価しない」が6人、「どちらとも言えない」が4人、「評価しない」が3人と続いた。
「高く評価する」または「評価する」の党派別内訳は、自民30人、立民11人、公明4人、無所属13人だった。50代男性候補は「復興・再生など課題解決に積極的に挑戦している」と理由を記した。60代男性候補は「成果を重視する姿勢が明確で、課題に対する迅速で柔軟な対応がみられる」とした。
「評価しない」または「全く評価しない」と答えた候補者の内訳は自民1人、共産6人、諸派1人、無所属1人だった。理由として70代女性候補は「県民の声より国の言いなり」と答えた。30代男性候補は「東京電力福島第1原発の処理水海洋放出に対し賛成・反対の立場を取っておらず、知事としての責任感が感じられない」とした。
内堀県政は、共産党を除いた与野党相乗りによる「オール福島」態勢の下で誕生した経緯がある。昨年10月の知事選でも同様の態勢で組織戦を展開し内堀知事を3選に導いており、評価にもその経緯が反映される結果となった。
■「適正」7割以上 議員定数
現在の県議会の議員定数58が適正かどうかの問いでは、「適正」との回答が52人で最も多く、全体の7割以上を占めた。
回答は【グラフ】の通り。52人の内訳は、自民26人、立民9人、共産6人、公明3人、無所属8人だった。40代男性候補は「地域の実情を県政に反映するには現在の議員定数が必要」と理由を記した。
「減らすべき」が16人で続き、内訳は自民4人、立民4人、公明1人、維新1人、諸派1人、無所属5人。70代男性候補は「人口との整合を取るべき」とした。「増やすべき」は無所属の1人。該当する選択肢がないとして自民1人と無所属1人が無回答とした。
都道府県議会の定数は公選法と地方自治法に基づき、国勢調査人口を踏まえて条例で定める。本県議会の法定定数は改正前の地方自治法に照らすと1減の57となる。改正で上限は撤廃されていたが、県議会は現定数の妥当性を独自に検証。東日本大震災や東京電力福島第1原発事故からの復興が途上にあることなどを背景に、現行の枠組みの維持を決めた。
■「30%以上に」半数近く占める 女性議員比率
県議会の女性議員の比率の在り方も聞いた。比率を「30%以上」にするべきとの回答が32人で最も多く、半数近くを占めた。
回答は【グラフ】の通り。「30%以上」の内訳は自民22人、立民3人、公明1人、無所属6人だった。60代男性候補は「まずは女性が立候補しやすい環境の構築が重要」とした。
「50%以上」は16人で、70代女性候補は「男女半々が当たり前」とした。「その他」は18人となり、50代男性候補は「女性議員が増えるのは賛成だが、比率で決めるものではない」とした。
現在の女性県議は5人で、全58人に占める割合は約9%。回答が最も多かった30%以上を達成するには少なくとも女性議員を18人とする必要があるが、今回の女性立候補者は8人にとどまっている。
■8割が「適正」 議員報酬
議長、副議長以外の議員報酬の年間1387万円(期末手当を含む)が適正かどうかを尋ねた質問には、約8割の55人が「適正」と答えた。
回答は【グラフ】の通り。「適正」としたのは自民30人、立民10人、公明4人、無所属11人。「減らすべき」は14人で、立民2人、共産6人、無所属4人、維新1人、諸派1人だった。自民1人が「増やすべき」、立民1人が当てはまる項目がないとして「無回答」とした。