新型コロナウイルスの感染症法上の分類が5類に移行し、苦境からの巻き返しを図る県内の企業は人手不足に頭を悩ませている。郡山市の運送業者は資格取得費の補助などを打ち出しているが、効果は薄く、就労支援を求める声は切実だ。観光業は新型コロナの影響が弱まり回復傾向にあるものの、全国的に急増しているインバウンド(訪日客)の取り込みには苦戦。関係者は「新しい県議には県の対策を強く働きかけてほしい」と訴える。
福島労働局によると、県内の9月分の有効求人倍率(季節調整値)は1・36倍で、求人が求職を上回っている。県は県内や首都圏などに就職相談窓口を設置するなど、人材確保に向けた取り組みを進めているが、企業経営者らは働き手を求めても人が集まらない窮状に危機感を強めている。
郡山市の運送業「大原運送」はドライバー約20人のうち、半数が50代で高齢化が進む。さらに運転手の残業規制が強化される「2024年問題」が来春に迫り、一層の人手不足が予想される。
将来を見据え、20~30代のドライバーを増やそうと、自社ホームページやハローワークなどで常時、社員を募っている。入社後の大型免許取得も可能で、取得費用を全額補助するなど独自の支援策を講じている。しかし求人に手を挙げる若者がほとんどいないのが実情だ。
専務の大原慶大(よしひろ)さん(30)は、就職などで県外に若者が流出するのが要因の一つとみている。「地元企業の魅力をPRし、若者のUターンを促進させる仕組みづくりを県議会で議論するべきだ」と求めている。
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新型コロナの5類移行と円安などの影響で、国内のインバウンドは増加しているが、県内の訪問者数は隣県の宮城県などと比べ伸びを欠いている。今年1~8月に県内の宿泊施設(従業員数10人以上)に宿泊した訪日客は延べ10万5430人。宮城県の3分の1にとどまっている。
会津若松市の飯盛山にある土産店「会津幸泉小法師」の営業部長の古川英司さん(68)は「客足は回復しているが、訪日客の多くが会津に宿泊していないのが気になる」と話す。
訪日客は首都圏や東北地方など広域周遊型の観光が多く、会津での滞在時間が短いケースが多いという。滞在時間を延ばすため、福島空港のさらなる利用促進、空港や駅からバスやタクシーで目的地へ向かう2次交通の整備が重要視されている。
県は会津若松―郡山駅間の高速バスとリムジンバスを乗り継いだ福島空港利用者に乗車料金を補助している。古川さんは「航空便自体の本数と福島空港に向かうバスの増便が必要だ。当選した県議には、県内での滞在を誘導する交通網の再構築を進めてもらいたい」と要望した。