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【被災地の復興】音楽なども取り入れて(11月21日)

2023.11.21 08:53

 音楽は聞く人を勇気づけ、元気にする。時には傷ついた心を癒やしてくれる。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故発生後、被災地でさまざまな演奏会が開かれている。一過性の企画で終わらせず、交流人口の拡大など波及効果を高める取り組みを求めたい。

 双葉町中野地区の復興産業拠点で12日に開かれたコンサートは注目に値する。立地する企業などで組織する団体が「双葉ジャンプアップコンサート」と題して主催した。岐阜県から進出した浅野撚糸が4月に開所した双葉事業所「フタバスーパーゼロミル」を会場として提供し、カフェスペースを初めて開放した。

 日本フィルハーモニー交響楽団弦楽四重奏団と、いわき市のスパリゾートハワイアンズのダンシングチーム「フラガール」が出演して盛り上げた。一流の演奏家の音色と、全国に誇る華やかな踊りが来場者を魅了した。自治体や民間団体だけでなく、企業が連携しての取り組みは、住民と企業の結び付きを強める上でも意義深い。

 中野地区の復興産業拠点は、東日本大震災・原子力災害伝承館や町産業交流センターを含む約50ヘクタールの広大な敷地を有している。17区画で現在、地元企業を含め、建設、運輸、ホテル、レンタル、リサイクル業など約20社が操業し、双葉町をはじめ双葉郡全体の復興に寄与している。

 町は復興をけん引する「働く拠点」と位置付け、国、県、町の優遇制度を紹介しながら地元企業の帰還や事業再開をはじめ全国からの企業誘致に注力してきた。取り組みを継続、強化すると同時に、企業間の横断的なまとまりも深めてもらいたい。

 町内に設定された特定復興再生拠点区域(復興拠点)の避難指示が解除されて1年4カ月余りが経過する。音楽をはじめとする芸術、文化、祭りなどの伝統行事の再興は住民の心の復興に欠かせない。

 こうしたイベントに際して、住んでいる人や働いている人、訪れた人が触れ合える場を設けてはどうか。交流人口だけでなく、より深い愛着を持ってくれる関係人口の拡大にも通じる。ホープツーリズムと合わせて実施すれば、復興の現状を間近に感じてもらえ、新たなつながりも生まれるはずだ。(古川雄二)