X メニュー
福島のニュース
国内外のニュース
スポーツ
特集連載
あぶくま抄・論説
気象・防災
エンタメ

【原発の廃液飛散】管理態勢の強化を(11月29日)

2023.11.29 08:57

 東京電力福島第1原発の作業員が放射性物質を含む廃液を浴びた事故で、作業のずさんな管理態勢が浮き彫りになった。東電の調査報告によると、現場で指揮する班長が不在で、汚染を防ぐ雨具を着用しないまま作業していたほか、予定外の弁の操作をしたり、ホースの固定が不適切だったりするなどのミスが重なった。管理態勢の強化を含め、再発防止対策を徹底する必要がある。

 事故は10月25日、汚染水を浄化する多核種除去設備(ALPS)建屋内で起きた。放射性物質が通る配管洗浄後の廃液をタンクに注ぐ作業中、弁を動かしたことで水圧が高まるなどして、ホースが外れた。液体が飛び散った場合に備えて防具を着用する決まりはあるが、「過去の経験から飛散する可能性はない」と過信し、身に着けていなかったという。「廃炉を安全最優先で確実に進める」と繰り返してきた東電上層部と現場の意識に隔たりはなかったか。

 作業員は東電から受注した元請け会社の下請け業者に属していた。では、事故の責任はどこが負うのか。東電は請負契約で受注者に安全確保を義務付けている。発注者として状況確認など「一定の対応」を講じてきたと説明し、原因はあくまで元請け会社の不適切な管理にあると主張する。契約上の主従関係はあるにせよ、受注先の不備を見抜けなかった責任は大きい。

 東電によると、福島医大付属病院に搬送された作業員2人は、現時点で体調面に問題はないようだ。とはいえ、放射線にさらされての入院は2011(平成23)年3月24日以来となる。極めて深刻な事態とみるべきだろう。

 再発防止対策として、弁の操作を禁止し、ホースとタンクをボルトで固定する。さらに、現場の巡回を強化し、元請け約50社にルール順守を求めたとしている。下請けの中小事業者は人員確保などに苦労していると聞く。労働環境への目配りも求められる。

 汚染水の浄化作業は、処理水を安全に海洋放出するのに不可欠で、不適切な行為が新たな風評を生じさせる懸念もある。岸田文雄首相は「全責任を持って対応する」と約束した。政府も事故を重く受け止め、東電任せにせず、作業の監視、指導に努める責務がある。(角田守良)