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【霞む最終処分】(9)第1部「中間貯蔵の現場」除染土壌 資材化に課題 異なる性状、強度不足

2023.12.30 09:40
中間貯蔵施設の敷地内に造られた道路。盛り土に除染土壌が使われている

 東京電力福島第1原発事故に伴う中間貯蔵施設(大熊町、双葉町)の敷地内に今年10月、延長180メートルの新たな「道路」が完成した。盛り土に除染土壌を使う実証事業として環境省が整備した。

 環境省が関東地方で計画する実証事業は手詰まり状態にある。除染土壌を自由に移動できる中間貯蔵施設の敷地内に整備した道路の盛り土を来訪者に見てもらい、除染土壌の再生利用への理解を促す狙いがある。

 ところが、整備の過程で難題が浮かんだ。「現状では、除染土壌を土木資材として大量かつ速やかに供給するのは困難ではないか」。省内から懸念の声が上がる。

    ◇    ◇

 道路は延長180メートルのうち50メートルの区間で土台となる「路体」に、1キロ当たり平均6400ベクレルの放射性物質を含む除染土壌2700立方メートルを使用した。除染土壌から舗装面までは1・6メートルほどの厚さで放射性物質に汚染されていない土による路床などを設け、のり面は厚さ50センチ以上の覆土を施した。路面上の空間放射線量は毎時0・2マイクロシーベルト程度で、周辺と変わらない。

 盛り土を造るに当たり、土壌の強度が課題となった。中間貯蔵施設で保管されている除染土壌は、県内各地の宅地や農地から剥ぎ取っているため、性状がそれぞれ異なる。特に農地の土は軟らかく、水分を多く含む。道路盛り土に用いるには強度を高めなければならず、焼却灰を溶融したものを冷却固化した物体(スラグ)や石灰を混ぜるなど試行錯誤を重ねた。実際に道路上で車を走らせるなどして、強度や安全性を確認する。

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 除染廃棄物は2045年3月までの県外での最終処分が法律で定められている。実現に向け、政府は放射性物質濃度が比較的低い土壌を道路や防潮堤の整備などの公共事業で使い、処分量を減らす方針だ。再生利用の割合が増えれば、最終処分の量が減り、受け入れ先の負担は軽くなる。

 再生利用を進めていくには、建設現場などでまとまった量を使うケースが想定される。一方、除染土壌の固さや含水量などの品質を一定に保った上で現場に供給する設備は現時点で整っていない。環境省福島地方環境事務所中間貯蔵総括課長の服部弘は「これまでの計画にない、新たな設備が必要になる可能性もある」との見方を示す。(敬称略)