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【霞む最終処分】(10)第1部「中間貯蔵の現場」 残された時間「たった22年」 技術と理解醸成必須

2023.12.31 09:44
環境省が入る東京・霞が関の合同庁舎。除染廃棄物の県外最終処分に向けた対応が求められている

 東京電力福島第1原発事故に伴う中間貯蔵施設(福島県大熊町、双葉町)に保管されている除染廃棄物については、中間貯蔵・環境安全事業株式会社法で「国は、中間貯蔵開始後30年以内に、福島県外で最終処分を完了するために必要な措置を講ずるものとする」と定められている。実現に向け、まずは乗り越えなければならない二つの壁がある。「技術」と「理解醸成」だ。環境省は両にらみでの対応が求められる。

 環境省環境再生事業担当参事官の中野哲哉は「簡単に解決できるものではない」と悩ましい表情を浮かべる。

    ◇    ◇

 県外最終処分に向けては廃棄物の量を減らすため、土壌の再生利用が欠かせない。環境省の有識者会議は再生利用の技術確立に向けた検討を続けている。

 廃棄物の最終処分や土壌を再生利用する際の取り扱い方の基準を設け、2024(令和6)年度までに放射性物質汚染対処特別措置法に基づく環境省令に盛り込む方針。基準により再生利用できる量が明確化し、具体的な最終処分量をはじき出せる。その上で、廃棄物の放射性セシウム濃度を推計し、最終処分場の構造や規模を具体化できると見込む。

 技術を確立する過程で国際原子力機関(IAEA)の知見を取り入れる。既にIAEAと2回の専門家会合を開き、今年度末にも3回目を開く予定。国際的権威のある第三者機関の「お墨付き」を得る考えだ。

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 除染土壌の再生利用を巡っては、環境省が計画する実証事業に反対の動きが出るなど、人々の「拒否感」は根強い。再生利用を進めつつ廃棄物の最終処分先を絞り込むには、国民の理解醸成が欠かせない。環境省は若者と膝詰めで議論する取り組みを今年度中に始める考えだ。2045年ごろに現役世代の中心となる若年層を重視する。

 近く新たなワーキンググループ(作業部会)も設ける。除染土壌の再生利用や県外最終処分場の建設に向け、関係者との効果的な対話の手法などを探る。

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 ただ、最終処分の議論は始まったばかり。最終処分場の選定、建設にも多くの時間を要することが見込まれる。10月に講演した知事・内堀雅雄は「法律で定められた2045年まで、たった22年」と危機感をあらわにし、国が責任を持って対応するよう訴えた。

 政府が福島第1原発の処理水の海洋放出に至る経緯で持ち出した「その場しのぎ」や「結論ありき」の進め方を繰り返せば、国民の理解を得るのは困難になりかねない。中野は「県外最終処分は、中間貯蔵施設のために土地を提供した住民の重荷が永続的にならないように決めた方向性だ。2045年までに県外最終処分を終わらせるとの約束を果たさなければならない」と自らに言い聞かせた。(敬称略)=第1部「中間貯蔵の現場」は終わります=