相馬、伊達、新地の福島県内3市町に面する宮城県丸森町は東京電力福島第1原発事故に伴い、町内全域での除染作業を余儀なくされた。発生した土壌と廃棄物は約8万立方メートルに上る。今も町内の仮置き場25カ所と、学校や公園の敷地19カ所に保管されたままだ。
町中心部から車を10分ほど走らせた山間部にある上滝仮置き場。2021(令和3)年11月から昨年10月まで、環境省の実証事業が行われた。深さ約2メートルの2カ所の穴に遮水シートと汚染されていない土壌を敷き、除染土壌など約180立方メートルを詰めて覆土し、空間放射線量や浸透水の放射性セシウム濃度などを測定した。作業員の年間被ばく線量が1ミリシーベルトを下回るのかも調べた。環境省は「安全な埋め立て方法の有効性が確認できた」と評価している。
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福島県内で生じた除染廃棄物は、中間貯蔵施設への搬入開始から30年以内の県外最終処分が法律に明記されている。これに対し、県外の除染土壌や廃棄物に関しては、放射性物質汚染対処特措法に基づく基本方針で「発生量が比較的少なく、汚染度も比較的低いと見込まれるため、各都道府県の区域内で処分を進めることとする」とされている。ただ、どのような手法を用いるのかは原発事故発生から13年が経過した現在も示されていない。
環境省は今年度にも除染土壌を埋め立て処分する際の具体的な基準を公表する方針だ。同省環境再生事業担当参事官室・参事官補佐の山口裕司は「丸森などでの実証結果を踏まえ、検討チームで議論を進めたい」と語る。
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一方、町は除染土壌の取り扱いに関して「国と東電の責任で町外に持ち出してほしい」と訴える。福島県と同様に原発事故で被災したにもかかわらず、県が違うだけで対応に大きな差が生じている現状は受け入れがたいとの思いが根底にある。
原発事故さえなければ発生しなかった廃棄物だとして、町外への運び出しを求める声は町民にも根強い。上滝行政区長の宍戸政秀は「外への搬出を前提に仮置き場の設置を受け入れた。町内での処分には反対だ」と言葉に力を込めた。
丸森町は福島市と相馬市を結ぶ東北中央自動車道「相馬福島道路」の一部区間が通る。福島県内の除染で出た土壌を中間貯蔵施設(大熊町、双葉町)まで運ぶルートにもなった。町総務課長補佐の石田真士は「町内を通るなら一緒に持って行ってほしかった」と本音をこぼした。(敬称略)