X メニュー
福島のニュース
国内外のニュース
スポーツ
特集連載
あぶくま抄・論説
気象・防災
エンタメ

【霞む最終処分】(32)第5部 福島県外の除染土壌 宮城・丸森㊦ 25カ所仮置き場集約へ 「福島の行方」を注視

2024.04.03 10:25
市街地にほど近い仮置き場。町内最多の約8千立方メートルが保管されている

 宮城県丸森町長の保科郷雄は昨年12月、町内25カ所に点在する東京電力福島第1原発事故に伴う除染土壌と廃棄物の仮置き場を、将来的に1カ所に集約する方針を示した。町議会一般質問で町外搬出への姿勢を問われ、「民有地や学校などの保管分も含め、町長任期中(2027<令和9>年1月まで)に1カ所への集約を検討している」と表明した。

 町は除染作業と並行して2012(平成24)年度ごろから仮置き場を各地に整備してきた。だが、保管が長期化する中で、自然災害の際に土壌流出などが懸念されるとし、一元的な維持管理によって安全を確保する必要があると判断した。町の担当者は「将来的に町外に運び出す際も効率化が図れる」と集約の狙いを語る。

    ◇    ◇ 

 町はこれから議論を進める考えだが、集約先の選定は難航しそうだ。除染を始めた当初、仮置き場は町内に1カ所とする計画だったが、町民から「よその地区の土を持ち込まれたくない」との声が上がり、25カ所に散らした経緯がある。

 既存の仮置き場はいずれも容量が足りず、町内の全ての除染土壌などを運び込むのは不可能だ。町は新たな整備を模索するが、担当者は「どこに造るかが一番頭の痛いところだ」と悩みを打ち明ける。

 保科が示した方針に対し、町議からは「将来的に町外に搬出するためにも1カ所にまとめるべきだ」との肯定的な声が出ている一方、「大きな騒ぎになっていないのだから、現状のままでいいのではないか」との意見もある。町議会議長の佐藤吉市は「除染土壌の安全面に対し、町民はさまざまな思いを抱いている。100%の合意を得るのは難しいと思うが、町と連携して理解醸成に取り組む」と心境を語る。

    ◇    ◇

 環境省は除染土壌の再生利用を全国に広げるために茨城県と埼玉県、東京都で実証事業を計画しているが、地域住民の反発を受けて実施に至っていない。除染土壌の再生利用を進め、最終処分量を減らす努力が求められる。自民、公明の両党は3月6日、再生利用などの取り組みを政治主導で実現させるように促す内容を盛り込んだ第12次提言を首相・岸田文雄に申し入れた。

 佐藤には福島県内の中間貯蔵施設にとどまる除染土壌の対応を最優先すべきとの思いがある。「福島の筋道が立たなければ、丸森は何も進まない」とみている。除染土壌を巡る議論の先行きが見えない中、「国の責任で明確な処分の流れを示してほしい」と切実な思いを口にした。(敬称略)