X メニュー
福島のニュース
国内外のニュース
スポーツ
特集連載
あぶくま抄・論説
気象・防災
エンタメ

【震災・原発事故14年】福島イノベ構想新戦略 先端技術で生活環境改善 企業と連携 公的サービス補完 政府方針

2025.02.25 10:47

 福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想の推進に向けて政府は2026(令和8)年度から、進出・地元企業の技術や人材を、東京電力福島第1原発事故に伴う避難指示が解除された地域の生活環境の改善に生かす取り組みを強化する。最新技術を用いたデマンド交通の実証や防犯・景観対策など公的サービスへの参画を促し、公共交通・流通の不便や担い手不足を解消し、住民の利便性を高める。近く改定する新戦略に具体的な事業を盛り込み、復興基本方針にも反映させる。


■起業家呼び込みなど加速

 政府が24日、福島市で開いた福島復興再生協議会で構想に基づく戦略改定の方向性を示した。改定の主な内容は【下記】の通り。

 生活環境の改善では企業が公共サービスの空白を補う仕組みを整える。情報通信技術(ICT)や人工知能(AI)、自動運転など最新技術の導入を想定し、運転手や利用者の少ない地域でタクシーやバスの広域運行実証などを目指す。

 防犯見守りや除草など原発事故発生前に住民らが担っていた活動に、先端技術を持つ企業に加わってもらうことも検討。市街地でのドローン配送の規制が緩和される地域課題解決連携特区(連携絆特区)に当たる強みを生かし、ドローンによる生活品配送システムの具体化も視野に入れる。

 企業収益や住民所得を高める支援では、先端的な企業への部品・設備の供給に地元業者が携わる仕組みを築き、企業間の取引や販路拡大を促すマッチング支援にも注力する。廃炉、ロボットなど構想の重点分野で浜通りが開発・製造など競争力を備えた地域となるよう産業集積も加速させる。

 担い手の拡大策には、革新的なサービスや技術の開発に挑む新興企業(スタートアップ)を誘致する新たな支援などを想定。県外の企業や創業に関心のある人材や事業者を呼び込む事業も重点的に取り組む。福島国際研究教育機構(F―REI、エフレイ)などと連携し、若手技術者や研究者らの教育プログラムも行い地域への定着につなげる。

 避難指示が解除された地域では帰還や移住が進む一方、原発事故から14年となる今なお課題が山積している。公共交通は帰還率の低迷などから運転手、利用者ともに少なく、バスやタクシーなどの採算確保が難しい。製造業やサービス業など他業種も人材難や低収益などに直面し、廃業、撤退する例もある。被災12市町村の事業再開率は5割で頭打ちとなり、新たな企業や人材の流入が急務だ。

 新戦略では構想に基づく企業誘致や研究開発の促進に加え、企業が活躍できる場を広め、地域課題の解決と産業発展を両輪で推し進める。伊藤忠彦復興相は終了後、「浜通りなどでの新事業展開や産業集積をさらに加速させる必要がある。イノベ構想発展に向けた検討を深める」と述べた。


◆福島イノベーション・コースト構想を軸とした産業発展戦略の改定の主な方向性

【生活環境の改善】

・地域企業が技術やアイデアを生かし、交通や防犯・景観維持など公共サービスを補完

・人口減少地域の生活の不便さを軽減、解消し、社会課題の解決モデルを構築

【企業収益や住民所得の向上】

・廃炉、ロボットなど重点6分野のイノベーションを深め、地域の強みとする

・新市場の創出を含む企業活動を支援し、産業集積を進める

・供給網や事業者の業種を超えたコミュニティーの構築を後押しし、構想の効果を地域企業に波及させる

【担い手の拡大】

・新興企業や起業家の呼び込み

・関係人口の拡大や若手人材の育成強化

・新たな担い手と自治体、帰還者とのコミュニティー形成